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日本株投資歴長い海外投資家 安倍政権の外交・歴史問題注視

日本の株式市場の6割を占めるといわれる外国人投資家。株価上昇が一段落した今、彼は今後日本に対する投資戦略を考える上で、政治・経済のどのような部分に注目しているのか。世界のファンドフロー分析に詳しいパルナッソス・インベストメント・ストラテジーズ代表取の宮島秀直氏が分析する。

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昨年12月以降、日経平均株価でかなり上昇した日本市場だが、外国人投資家が抱いている懸念は、日本株が今後も堅調を持続するのかどうかという、いたってシンプルなものだ。その背景には2006年に発足した第1次安倍政権の経緯がある。

当時も、政権発足直後は、世論の高い支持を得て、株価は上昇した。しかし、それで緩んだのか、金融政策は中途半端なものとなり、株価の上昇は個人消費の拡大に繋がらず、景気回復は途中で腰折れしてしまった。加えて、タカ派的な発言を繰り返し、周辺諸国との外交を悪化させ、選挙に大敗し、退陣に至った。当然、株価は下落後、低迷する。

日本株への投資歴が長く、そうした経緯を知る香港やシンガポールの投資家たちは、今回の第2次安倍内閣について、次のような点に注目している。

【1】GDP成長率、為替動向、株価などの動きは良好だが、第1次政権時とそれほど変わらない。資産価格の上昇が消費拡大に繋がるまで、緩和を緩めずに突き進み、デフレ脱却に成功するかどうか。

【2】企業は史上最高水準の内部留保を抱え、設備投資などに前向きな点は評価できる。さらに、雇用や賃上げに積極的に動くかどうか。まずは、夏や冬の企業の一時金(ボーナス)がどの程度引き上げられるか。

【3】安倍政権が、改憲や安全保障などのテーマに政策の重心を移してしまわないか。国民の関心が薄いこうした問題に注力し、近隣諸国との関係悪化を招くと、支持率が急降下する可能性がある。その意味でも、8月の靖国神社への対応がどうなるか。

特に、【3】について外国人投資家の注目度は高い。「安倍政権が外交や改憲の話を、どのくらい選挙公約に盛り込むかによって、買い続けるか、すぐに売って逃げるかを判断したい」と断言する、大手ヘッジファンドのトップもいた。

安倍政権が、金融緩和を継続し、改憲・安全保障の問題を棚上げにしつつ、雇用、賃上げを最重要政策として維持し続けられるかどうかが、外国人の日本株買い第2弾の鍵を握っているといえよう。

※マネーポスト2013年夏号

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