キャリア

気象予報士試験「合格率5%」の実態 それでも大変なのは合格してから

 気象予報士試験の合格率を約5%と低くしているのは、「選択式の学科試験をとりあえず受けておこう」という受験生が相当数いるからと思われる。近年、「〇〇検定」と名づけられた民間試験が多くあるが、それらを“記念受験”する人たちは少なくない。気象予報士試験の場合も、会場で試験監督を行った私の経験からしても、「とりあえず学科試験を受けておこう」と考える受験者は少なくない印象だ。出願者の間口がとても広く、これが合格率を低くしている大きな理由とみられる。

 では、学科試験を突破した後の実技試験の合格率はどうだろうか。学科試験に合格すると、合格発表日から1年間は学科試験が免除され、次回からは実技試験のみの受験となる。学科試験免除組の受験番号には特徴があるため、彼らのうちどのくらいが実技試験を突破したかが分かるのだが、それはおおよそ20%ほどである。一度の試験で学科と実技の両方を突破する猛者はごくわずか。学科試験で受験生の大半が不合格となり、学科試験を突破してもさらにその8割が振り落とされることを考えると、5%という低い合格率になることもお分かりいただけるだろう。

合格してからが難しい気象予報士の仕事

 最初からしっかり勉強して学科試験に挑めば、その次の実技試験の「合格率20%圏内」に入るのはそれほど難しくないかもしれない、と考える人もいるかもしれない。だが、皆さんの周りに気象予報士を目指している人がいるなら是非伝えて欲しいのが、「試験問題よりも実際の気象予報は、想像をはるかに超えて難しい」ということだ。これは全ての気象予報士が実感することだろう。

 当然だが、毎日の気象予報は試験問題のように明解なものばかりではない。予報するための資料も試験問題のように提示されているわけではなく、自分で的確な天気図や画像データなどを探さねばならない。もちろん最初から完璧に出来る人はいないため、皆先輩予報士の下に付いて何年も学ぶところからスタートするのだ。テレビで見かける気象キャスターの多くも、予報技術を向上させるためこうした経験を積んでいる。

 多くの気象予報士は、予報技術に特に優れ、業界で有名な先輩予報士の下で学ぶことが多い。テレビで見る気象キャスターのうち何人かは、「この人はあの先生に教わった」と先輩予報士の名前と顔を浮かべることができる。私自身は、航空自衛隊で長年気象業務に携わってこられた東修造先生から学んだが、最初に言われた先生の言葉は強く記憶に残っている。

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。