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日銀の「新型金融緩和」に潜む2つの問題点

 10年物国債は毎月発行されるため、1か月ごとに対象となる銘柄は交代する。国債には発行回数を表わす「回号」付いており、2016年9月の新発10年物国債の回号は「344回債」。この344回債の21日の利回り(終値)は-0.035%だったので、9月21日時点の長期金利は-0.035%、ということになる。

 そこで、改めて今回の日銀の金融緩和策を検討してみると、目下、2つの問題点が浮かび上がってくる。ひとつは、前述したように、長期金利は日銀が決めるのではなく、金融市場における金融機関同士の取引で決まってくるため、日銀の思惑どおり、0%程度に“誘導”できるかどうか不透明な点だ。

 ふたつめは、現時点の長期金利がマイナス水準であるため、0%に誘導するということは、金融緩和ではなく金融引き締めにつながるのではないかと金融市場が受け止めてしまう懸念だ。外国人投資家の一部は今回の日銀の措置を“引き締め”ととらえ、実際に為替相場では日銀の発表後に円高が進んだ。

 日銀が打ち出した今回の金融政策は、国内の金融市場関係者の間でも「難しい」「わかりにくい」といった声が多い。金融緩和なのか金融引き締めなのか、解釈の仕方も識者によってかなり異なっている。今後の日銀には、マーケットに誤解を与えないような政策運営が、これまでにも増して求められるだろう。

文■松岡賢治(マネーライター)

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