田代尚機のチャイナ・リサーチ

世界経済の波乱要因「中国のゼロコロナ政策」は今後さらに厳しく、秋まで継続必至

新型コロナウイルスの感染者1人が確認され、封鎖措置が始まった中国・北京市内のマンション(時事通信フォト)

新型コロナウイルスの感染者1人が確認され、封鎖措置が始まった中国・北京市内のマンション(時事通信フォト)

 グローバルで株式市場が大きな変動に見舞われる中、米FRB(連邦準備制度理事会)の金融政策に世界の注目が集まっている。

 およそ40年ぶりの水準まで高まったインフレへの対策が急務である。しかし、利上げの幅が大きすぎたり、ペースが速すぎたりすれば、過剰流動性の急速な萎縮が起きかねない。そこに容赦のないQT(量的引き締め)が始まれば、予想外の資金流出が起きかねない。経済面では、景気をオーバーキルしてしまうかもしれない一方で、インフレ対策を始めるのが遅ければ、スタグフレーションを引き起こしてしまうかもしれない。

 大きなリスクがあるからこそ、FRBは“失敗できない”のである。

 最大の懸念材料は、FRBにも出来ることと出来ないことがあるという点だ。景気が過熱しているだけなら金融政策だけで対処できるかもしれない。しかし、外部要因など、供給サイドの問題を内包していたとすれば、それへの対処は困難である。

 中国リスクはどうだろうか。

 4月の中国の輸出(ドル建て)は3.9%増で、3月と比べ10.8ポイント低下した。伸び率大幅鈍化の最大の要因は、一部の地域で実施されている厳しい「ゼロコロナ政策」だ。

 もっとも、足元で米国向け輸出に大きな鈍化がみられるわけではない。しかし、今後、厳格なゼロコロナ政策の実施が長期化し、米国側の需給要因ではなく、中国側の供給要因で米国向け輸出が鈍化するようなことになれば、米国は輸入インフレにも十分な警戒が必要となる。

ゼロコロナ政策をさらに厳しく実施する

 5月5日に開催された中央政治局常務委員会では、ゼロコロナ政策を徹底して行う方針が示された。

 習近平国家主席が主催する共産党の重要会議においてゼロコロナ政策強化の方針が決定されたインパクトは大きく、6日の上海総合指数はそれまでのリバウンド基調が一変、2%超の下落となった。

 習近平国家主席は会議の中で「武漢防衛戦線以来もっとも厳しい防御コントロールの試練を受ける中で、我々は今年3月以来、全国隅々まで心を一つにして努力し、肩を並べて作戦を練ることで、一定の成果を勝ち取った」と足元の対策を評価した上で「我々の防御コントロールの方針は共産党の性質や教義による決定である」と指摘しており、この対策が政治的に非常に重要だという点を強調している。

 また、「グローバルな感染状況は依然として高い水準を保っており、ウイルスは不断に変異しており、感染状況が最終的にどうなるのか非常に大きな不確実性がある。一息ついて、脚を休める状況には程遠い。我が国は人口大国であり、老齢人口が多く、地域の発展は不均衡であり、医療資源の総量が不足している。防御コントロールの勢いを弱めれば大規模なグループ感染が起こり、大量の重篤患者、病死者を出現させてしまい、経済・社会の発展や人民の生命の安全、身体の健康が著しく悪影響を受ける」と指摘。

 だからこそ、「1ミリも動揺することなく“動態的に完全なゼロ”を目指す総体方針を堅持する」と強調している。

 新型コロナウイルス感染拡大の状況を見ながら柔軟に対応するということではない。政治的にゼロコロナ政策をさらに厳しく実施するというのだ。

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