名門創業家には様々な苦労も(鳥井信宏氏=左と豊田章男氏。時事通信フォト)
会社を興した経営者の一族が、長きにわたって影響力を行使する──そうした「創業家」はニッポンの大企業に特徴的に多く、会社の成長とともに一族で巨額の資産を受け継いできたはずだが、詳細は公表されていない。
そこで本誌『週刊ポスト』が、上場企業の時価総額トップ300社の最新の決算資料から「大株主の状況」に記載がある創業家出身者、創業家が設立した資産管理会社が保有する株式の時価を集計し、「株保有資産額」の合計をランキング化。1位はユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井家で4兆9722億円、2位はソフトバンクグループの孫家(3兆1746億円)、3位はキーエンスの滝崎家(2兆5385億円)だった。【日本の創業家の株保有資産ランキング・全3回の第3回】
豊田家がトヨタ大株主の上位に入らない理由
IT企業などを興して一代で財を成した創業者が巨額の資産を持つのは世界に共通する現象だが、上位には、超有名創業家のいくつかが含まれていない。代表格が時価総額45兆円のトヨタ自動車の豊田家だろう。初代社長の利三郎氏、2代目の喜一郎氏はじめ、これまで多くの創業家出身者が社長ほか要職を歴任してきたが、なぜランク外なのか。経済ジャーナリストの福田俊之氏が言う。
「現会長の章男氏は2346万株を保有し、その時価は約586億円ですが、割合では約0.14%にすぎず、決算資料等に載る大株主の上位に入らない。創業家の持ち株比率が低いのに経営統治が成り立つのは『政策保有株(持ち合い株)』の存在が大きい。傘下のデンソーや豊田自動織機、アイシンに加え、関係のある金融機関や保険会社などがトヨタ株を保有し、安定株主として実質的に守っているからです。
豊田家による統治構造は国内外での存在感などプラスの面もあるが、アクティビストからは株主利益の軽視につながるのではないかと批判されることもあります」(福田氏)