突然の閉院は困る…(写真:イメージマート)
医療機関が突然閉鎖したら、そこへ通院していた患者には様々な不利益が生じることになるが、その場合、医療機関側が法的責任を問われることはないのだろうか。実際の法律相談に回答する形で弁護士の竹下正己氏が解説する。
【質問】
私は目に疾患があり、眼科医院に通院していました。それが先日、医院のドアに「駅前の開発事業のため、当医院を閉院します」との貼り紙。それまで患者には連絡がなく、カルテも受け取れず。結局、新しく探し出した眼科で、改めて検査することに。勝手に閉院した院長は、何らかの法に抵触していませんか。
【回答】
院長が急死した場合を別として、閉院を決めれば、その前に患者に閉院情報を提供し、新たな医院や診療所を紹介したり、探す機会を与えるべきだと思います。ただ、こうした道義的責任はありますが、法的な責任はありません。
ところで、医療機関が患者を診療する関係は準委任契約と解されます。医院を閉鎖すると、継続的に診ていた患者との診療契約を一方的に終了することになります。
しかし、準委任契約では契約当事者は何時でも契約解除でき、やむを得ない事情がないのに、不利な時期に解除した場合のみ損害賠償の責任が生じるだけです。以上により、閉院は可能ですし、特別な事情があって不利な時期の閉院になるとしても、転医ができないわけではないため、通常は損害が発生することはないと思います。