ただし、診療契約を解除して契約が終了するときは、患者から請求があった場合、遅滞なく患者に対して診察結果、治療の方法、その結果などを適切に説明、及び報告すべき義務(顛末報告義務)を負っています。
また、転医するとき、新たな診療機関がこれまでの診療経過における患者の身体状況、病状、治療等の診療情報を知ることが有用であることはいうまでもなく、厚労省の指針によれば、要請に応じて診療情報を提供し、さらに診療記録の開示も行なうよう指示されています。例外は、患者の心身の状況を損なうような場合に情報提供等を断われるだけとされています。突然の閉院であれば、そうした準備がなされているか疑問です。他にも『医師法』で、医院や診療所などは診療記録を5年間保存する義務があります。診療記録があってこそ、診療情報や顛末報告書を作成できるからです。
閉院の眼科医院が、この保存義務に違反していたら、院長は50万円以下の罰金で処罰されます。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2025年8月29日・9月5日号