レアアース精鉱の価格急騰の恩恵を受ける中国企業は(Getty Images)
中国経済に精通する中国株投資の第一人者・田代尚機氏のプレミアム連載「チャイナ・リサーチ」。関連記事《トランプ大統領の対中強攻策への報復措置「レアアース規制」「大豆輸入先シフト」が米国に与えるダメージの中身 再燃する米中貿易戦争の行方》を踏まえて、米中貿易戦争の激化で株価上昇期待が高まる中国株の個別銘柄について解説する。
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北方レアアース(600111:上海A株)は10月10日、2025年10-12月期のレアアース精鉱(内モンゴル・バヤンオボー鉱区にある世界最大級のレアアース鉱山での産出物)の取引価格を前四半期比37.1%高となる1トン当たり2万6205元(税を含まず)に引き上げると発表した。過去4四半期においても価格は上昇し続けているが、その上昇率は順に6.2%、4.7%、1.1%、1.5%増に留まっていた。今回の値上げ幅はこれらの上昇率と比べると極めて大きい。
この鉱区で産出されるレアアースにはランタン、セレン、プラセオジム、ネオジウム、テルビウム、ジスプロシウム、ユウロピウムなどが含まれる。この内、テルビウム、ジスプロシウムは希少な重希土類の中でも特に資源量が少なく、中国が供給量の9割以上を占めるレアアースだ。
これらの元素は、高温環境での作動が求められるEVモーターなどで必要不可欠となるネオジウム磁石の添加剤として使われる。ネオジウム磁石の用途は幅広い。スマートフォン、風力発電機、各種産業用機械(サーボモーター)、MRIに加え、高い耐熱性が求められる超高性能HDD(データセンター向け大容量ストレージ)の磁性材料などにも使われる。レアアース製品には旺盛な需要があるだけに、価格転嫁は容易である。世界最大規模のレアアース精鉱の価格上昇は、こうしたハイテク製品に関する重要部品の価格上昇を引き起こすだろう。