米国側の対抗策は限られる(トランプ大統領。Getty Images)
中国経済に精通する中国株投資の第一人者・田代尚機氏のプレミアム連載「チャイナ・リサーチ」。過熱する米中貿易戦争の内情についてレポートする。
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米中貿易戦争が再燃している。米国商務部は10月8日、中国企業15社、グローバルで半導体チップをはじめとした電子部品の販売を行う米国・アロー・エレクトロニクスの香港、本土子会社などについて、イラン政府の支援する武装組織に対して米国のドローン用電子部品の購入を仲介した疑いがあるとして、これら企業を新たに貿易制限リストに追加すると発表した。
これを受けて中国商務部は9日、11社の米国企業を新たに貿易制限リストに加えると同時に、採掘、精錬、分離、磁気材料製造などの技術・製品を含め、すべてのレアアースの輸出に関して厳格な審査を行い、承認を必要とするといった規制強化を開始すると発表した。輸出に当たって、特に最終用途を明確にするよう要求している。この規制強化によって、14nm以下の半導体チップ、256層以上のメモリ製造に関する半導体設備、材料、技術について、このレアアース規制が影響することになる。これは米国のハイレベルレアアース材料領域のサプライチェーンを標的としたもので、特に米国軍事産業、半導体産業などに大きな影響がある。
制裁の連鎖は止まらない。トランプ大統領は10日、11月1日より中国からの輸入品に対して100%の追加関税を賦課し、すべての重要ソフトウエアに関して輸出規制を導入すると発表した。さらに、4月17日から行われていた中国に対する海上業務、物流、造船などに関する301条調査の結果を発表、10月14日から正式に中国関連の船舶について別途港湾使用料を徴収することを決めた。これに対して中国側も特別港湾サービス費を徴収すると応酬している。そのほか、クアルコムに対して独占禁止法違反の疑いで調査を行うとしている。
激しく対立する両国政府だが、トランプ大統領が10月31日から韓国慶州で開催されるAPEC首脳会談に出席するかどうかが注目されている。予定通り韓国訪問は実施される見通しだが、そこで習近平国家主席との会談が行われるのか。両国首脳はいずれも教条主義的ではなく、現実主義者である。4月の相互関税率発表後の混乱時もそうであったが、厳しい措置は交渉前の立場を少しでも良くしようとするものであり、最終的には態度を軟化させる腹積もりではないのかと読む市場関係者は多い。