AIと消費関連事業の両輪で成長を目指すアリババ(Getty Images)
中国経済に精通する中国株投資の第一人者・田代尚機氏のプレミアム連載「チャイナ・リサーチ」。関連記事《中国本土市場「需要不足、供給過剰、デフレ下」での株高のなぜ 不動産不況が続くなか相次いで打ち出される発展戦略を市場が評価、強気相場は始まったばかりか》を踏まえて、今後の株価上昇期待が高まる中国株の個別銘柄について解説する。
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中国本土株式市場が活況だが、ハンセン指数にも上昇トレンドが発生している。トランプ相互関税ショック後の最安値(ザラ場ベース)は4月9日に記録した1万9260.21ポイントだが、9月2日の終値は2万5496.55ポイントで、この間の上昇率は32%だ。過去最高値は2018年1月29日の3万3484.08ポイントなので、最高値更新まであと31%の上昇余地がある。
相場好調の要因は本土市場同様、トランプ相互関税政策、半導体封じ込め政策の無力化、不動産不況に対する不透明感の払拭、景気対策、イノベーション加速への期待などが挙げられようが、価格形成において大きな影響力をもつ欧米系機関投資家が中国のイノベーション力に対する評価を大きく変えてきたことが、最も重要な要因ではないかと考えている。
今年1月27日に米国市場を襲ったDeepSeekショックは記憶に新しい。設立して2年しか経過していない中国ベンチャー企業“深度求索”がChatGPT-4oに匹敵する性能の大規模言語モデル(LLM)を低コストで開発、それをオープンソースで提供した。中国勢がAIに関しても米国の強力なライバルになることが明らかとなった瞬間である。