東京都心部の不動産価格の上昇が続いている。不動産経済研究所の発表によれば、10月に販売された東京23区の新築マンションの平均価格は1億5000万円を超えた。新築には手が届かない層の需要により中古マンション市場も“連れ高”となっている。ただ、不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏(オラガ総研代表)は、「一本調子の右肩上がりが続くとは考えにくい」と見ている。
不動産市場に流入している投資マネーは金融マーケットの動向に大きく左右されるし、東京都の人口も2040年頃にはピークアウトすると見られている。『街間格差』(中公新書)の著書がある牧野氏はこう言う。
「今後は、東京都全体の地価が上がっていくシナリオは描きづらい。私は“新陳代謝”と表現していますが、転入する人と転出する人の両方がいるかが重要になると考えています。人の動きがなくなる街から地価も伸びなくなっていくでしょう。同じ東京都内、同じ23区内でも、人気のある街と、人の動きがないエリアに分かれていくのではないか。
それを分けるのは、職場がある都心への利便性だけはないと考えられます。もちろん、利便性は重要ですが、それに加えて近くにいい公園があるとか、自治体が子育て政策や補助金などを充実させているといった“ウェルビーイング(心身ともに満たされた状態)”を提供できる街かどうかが重要になってくると考えます」(以下、「」内コメントは牧野氏)
利便性に加えて、街としての住み心地の良さといった魅力を放つ「輝く街」と、特徴を打ち出せないまま新陳代謝が悪くなっていく「くすむ街」に二分されていく――それが牧野氏の言う「街間格差」だという。
今回は、東京23区のなかでも埋め立てや再開発が進んで若い世代に注目されてきた江東区に関して、牧野氏が区内の「輝く街/くすむ街」を実名で挙げながら、先行きを解説していく。