不動産価格の上昇が続く東京都心部。不動産経済研究所の発表で、東京23区で新築マンションの平均価格が1億5000万円超えの水準となっていることも話題となった。高騰の背景には、海外からのヒト・カネの流入という要素も大きい。不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏(オラガ総研代表)が言う。
「足元で東京都の人口が増えている要因としては外国人の流入が大きいですし、金融緩和政策が続いて大幅な為替安(円安)を招いたことにより海外の投資マネーも日本の不動産市場に流入しています」(以下、「」内コメントは牧野氏)
ただ、そうした動きが将来的にも続くとは限らないと牧野氏は指摘する。
「金融危機や災害、感染症の大流行などによってストップする可能性がある要因であることを忘れてはなりません。インフレ社会においては金融政策が引き締めに転じることも考えられ、海外を含めた投資マネーはそうした変化に敏感に反応します」
東京都の地価が全面的に上がり続ける展開が考えにくいなかで、牧野氏は東京23区の同じ区内であっても、街によって明暗が分かれる将来がやってくると考えている。そうした問題意識から東京五輪前の2019年にまとめたのが著書『街間格差』(中公新書)だった。
「その街に転入する人、転出する人の両方がいて“新陳代謝”のある街が人気のある輝く街として伸びていく一方、人の動きがないエリアは街としてくすんでいき、地価も伸び悩むでしょう。街ごとに評価が分かれる傾向は、東京五輪後に一層強くなっていると思います」
今回は、東京23区のなかでも一部がインバウンド観光客によって賑わう台東区について、牧野氏が区内の「輝く街/くすむ街」を実名で挙げながら先行きを解説していく。