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FiscoNews

【注目トピックス 日本株】日本製鉄:割安成長株、配当4%、PBR1倍割れ、U. S. Steelへの設備投資で膨大な米国需要を取り込む(2)

*11:20JST 日本製鉄:割安成長株、配当4%、PBR1倍割れ、U. S. Steelへの設備投資で膨大な米国需要を取り込む(2)
「日本製鉄:割安成長株、配当4%、PBR1倍割れ、U. S. Steelへの設備投資で膨大な米国需要を取り込む(1)」の続き

日本製鉄<5401>

市場環境について振り返るが、足元は依然として厳しい。世界の鉄鋼需要は2021年をピークに、横ばいから微減の傾向にある。その中でも、中国における過剰生産体制は構造的な問題であり、安価な鋼材の海外流出が続いている。結果としてアジアをはじめ世界の鋼材市況が低迷。日本国内においても、住宅・非住宅着工件数が減少をたどる中、人口減、北米向け完成車輸出減、他製造業の間接輸出減等により国内鋼材需要の減少傾向は継続している。足元需要の低迷は想定を超えて深刻化しているようだ。さらに、脱炭素に伴う原料制約や製造コスト上昇など、短期的な課題だけでなく中長期的な構造変化への対応も求められている。

このような環境下で世界の鉄鋼メーカーの中で際立つ収益力を発揮している同社だが、U. S. Steelとのパートナーシップが開始された。U. S. Steelは、鉄鉱石鉱山・高炉・電炉を有機的に組み合わせた強力な設備構成となっており、米国内の幅広い顧客基盤を有するほか、歴史に裏付けられたブランド価値が存在している。普通株100%保有による経営の自由度を担保、先進技術を共有することでU. S. Steelの競争力を向上させ、米国の成長を捕捉して「総合力世界No.1の鉄鋼メーカー」となる。2028年末にかけて設備投資約110億ドルを費やし、商品メニュー強化・供給能力拡大とともに市場ニーズ対応力を抜本的に強化していく。また、黄金株を付与することで、同社の経営自由度と米国政府の監督権限の両立を行い、米国製造業の復活や雇用拡大、米国の産業・社会・安全保障に貢献していく。

市場関係者の焦点となっていたU. S. Steel買収における出資額の合理性については、一貫製鉄所の対価として経済合理性のある出資額となっている。グリーンフィールド投資では、設備立上げ・労働力の確保と訓練・販売先確保等のリスクが存在するほか、1千万t級の一貫製鉄所の建設から商業運転は相応の期間を要し、キャッシュアウトが先行する。今回のブラウンフィールドの優位性として、立ち上げリスクがなく、取得と同時にキャッシュフローが生まれ、製造業労働力の確保が困難な米国で熟練労働者を確保できる。また、米国鉄鋼市場は、世界経済の構造変化を背景にエネルギー・製造業等の鋼材需要分野における米国内回帰の動きが顕著となっており、輸出に依存しない米国内需要中心の需給構造となっている。さらに、先進国で最大の鉄鋼需要かつ日本製鉄の技術力・商品力を活かせる高級鋼の最大の市場となる。

中長期的な成長に向けて、日本製鉄<5401>は「グローバル粗鋼生産能力1億トン」「実力ベース連結事業利益1兆円」の早期実現を掲げており、幅と厚みを持つ強靭な事業構造へ進化させる。電磁鋼板や自動車向け高張力鋼板(ハイテン)などの高機能鋼材については、電動化・省エネルギー化ニーズの高まりを背景に需要が拡大しており、同社では能力・品質向上に向けた設備投資を継続している。生産能力増強投資はすでに進捗、収益貢献が始まっている。また、米国・タイ・インドといった成長市場での一貫生産体制構築や、川上・川下事業(原料調達・加工・物流)への展開を通じ、収益構造の強靭化を図る。海外では、中国発の過剰輸出問題の影響を受けにくく、成長するインド・米国における事業展開のさらなる強化を図る。環境面では、COURSE50(高炉水素還元製鉄)や大型電炉による高級鋼生産など、革新技術を実証段階から実用段階へと移行させており、将来的な競争力の源泉として期待される。

株主還元については、業績に応じた配当として連結配当性向30%程度を目安としている。安定的な高業績による継続的な高水準の株主還元を方針としており、企業価値向上を通じた還元拡大を目指している。直近の株価はやや低調に推移しているが、U. S. Steelの買収は経営の自由度と投資の採算性を確保していることは同社の説明資料からはしっかりと伝わってくる。従来本格的な事業拠点を有していなかった米国・欧州の拠点を一挙に獲得し、グローバルな広がりと世界トップクラスの規模を持つグループへと進化し他同社の今後の動向に注目しておきたい。

<HM>

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