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医心伝身プラス 名医からのアドバイス

「慢性疼痛治療の第一目的は、痛みをゼロにすることではありません」 “脳の経験”によって痛みの感じ方が左右される、慢性疼痛治療の難しさ【専門医が解説】

細胞や組織が傷ついて生じる急性痛に、神経障害や心理的・社会的な要因が絡み合うと、細胞や組織が回復しても痛みが残り慢性疼痛になる

細胞や組織が傷ついて生じる急性痛に、神経障害や心理的・社会的な要因が絡み合うと、細胞や組織が回復しても痛みが残り慢性疼痛になる

 原因のわからない継続的な痛みに悩まされるビジネスパーソンは少なくない。こうした「慢性疼痛」は、辛さや苦しさの経験が影響する脳の問題でもあるという──。シリーズ「医心伝身プラス 名医からのアドバイス」、痛みセンターで慢性疼痛の専門医として日々多くの患者と向き合い、苦しみに耳を傾ける愛知医科大学病院・牛田享宏副院長が解説する。【慢性疼痛のメカニズム・後編】

複雑化する痛みのメカニズム

 現在、日本疼痛学会を中心とした研究グループでは、痛みの分類の再構築を進めています。「急性疼痛と慢性疼痛」「体性痛と内臓痛」「身体の痛みと心理社会的要因の関与する痛み」「がん性疼痛と非がん性疼痛」といった分け方に加えて、神経メカニズム的な分類として「侵害受容性疼痛」「神経障害性疼痛」「痛覚変調性疼痛」の3つが使われます。

抑うつや不安、ストレスとなどの心理的・社会的要因は、痛みを悪化させたり、慢性化させる要因になる

抑うつや不安、ストレスとなどの心理的・社会的要因は、痛みを悪化させたり、慢性化させる要因になる

 侵害受容性疼痛は、組織が傷害されて炎症が起きるなどして、痛みのセンサーが反応し、その情報が脳に伝わって感じる痛みです。多くのケガや火傷などがこれに当たります。

神経障害性疼痛は、痛みを伝える神経システムそのものに障害が起きて感じる痛みです。末梢神経や脊髄、脳などの神経が、変性や断裂、損傷することで生じます。帯状疱疹後神経痛、脊髄損傷後の痛み、脳卒中後の痛みなどが分類されます。

 痛覚変調性疼痛は、2016年に国際疼痛学会が提唱し、翌年採択された「第3の痛み」です。組織の損傷や神経の損傷がないにもかかわらず、痛みの感受性が上がることで生じる病態で、線維筋痛症などがこれに分類されます。

従来の痛みの分類から、さらに神経メカニズムによる3つの分類が追加された

従来の痛みの分類から、さらに神経メカニズムによる3つの分類が追加された

神経の過敏化に効果のある薬

 これらは理論的な分類であり、実際の臨床現場では明確にわけられません。たとえば、ケガ(侵害受容性疼痛)をした後、傷が治っても痛みが残っているケースはよくあります。これは痛みが続くうちに「感作(かんさ)」といって、神経が過敏になり、痛みの信号が常に脳へ伝わることで、誤った回路が定着してしまったものと考えられます。

 こうなると、神経障害性疼痛の治療薬として承認されている「ガバペンチノイド」などが効く可能性があります。神経の過敏化には、脳脊髄の神経細胞が深く関わっています。痛みの伝達物質であるグルタミン酸によって痛みが伝わりますが、ガバペンチノイドはカルシウムイオンの通り道に結合することで、グルタミン酸の過剰な放出を抑え、鎮痛効果をもたらすのです。

次のページ:痛みは「脳の経験」と「情動」で変わる
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