「強い経済」実現のため高市早苗・首相に求められることとは(時事通信フォト)
日本経済はこの先どこに向かうのか。『2075 次世代AIで甦る日本経済』(日本経済新聞出版)を監修した元日銀副総裁の岩田一政氏は、“野心的なAI投資”が50年後の日本経済を左右すると説いた。ただ、日本経済の慢性的な低迷の背景には、硬直的な労働市場の存在があるという。再生へのカギを握る政策とは何か――。ノンフィクション作家・広野真嗣氏が、岩田氏にインタビューを実施した。
生産性の低い分野に人が集まる
――仮にAI投資を大規模に行ったとしても、「AIを仕事で使う人材の職場環境や企業文化が変わらないと本質的な変化は起きない」といった指摘もある。
岩田:それはその通り。とくに日本は労働市場がまだ硬直的です。本来成長を高めるためには、生産性の低い仕事から高い仕事に人材が移っていかなければいけない。生産性が比較的低いサービス業が縮小して、生産性が高い製造業に向けて人材が移ったり、新しい分野に優秀な人が移ったりしてイノベーションが促され、賃金も上がるはずです。
ところが実際には、生産性がすでに高いのに、競争環境のため生産性を高めようとしてさらに合理化する。だから製造業で働いていた人が生産性の低いサービス業に転職したりする。生産性の高い領域から生産性の低い分野に人が集まってしまうのです。
元日銀副総裁で日本経済研究センターの岩田一政理事長
――それでは賃金が上がらない、と。
岩田:デジタル革命の頃から言われたことですが、労働集約的で生産性が高まりづらい分野に人が集まる、経済学で、「ボーモルの病」と呼ばれる現象が起きているのが、日本の根深い問題だと思います。もちろん、一部はやむを得ない部分でもあって、介護などAIによる代替のハードルが高い分野もある。そんな分野が多いほど、生産性の伸びが低くなってしまいます。

