小学生が憧れる職業・医師(イメージ)
学研教育総合研究所が今年2月に発表した『小学生白書2025』によれば、小学生が将来つきたい職業1位は「ネット配信者」。2位「パティシエ(ケーキ屋)」、3位「警察官」、4位「学校の教員」と続き、5位は「医師(歯科医師含む)」だった。
「医師」は、ここ20年小学生が夢見る職業の上位をキープする。同社が発表している1997~2019年の“小学生が将来つきたい職業”30年史を参照すると、長らくトップ5には「パティシエ(ケーキ屋さん)」「プロ野球選手」「漫画家」など、男女それぞれに圧倒的な人気を誇る職業が占めるなか、2003年には「医師」が4位にランクイン。その後現在に至るまで上位をキープしている。
ただし、医師になるなら突破しなくてはならないのが医学部受験。となれば、医学部に合格するだけの学力が必要になるというわけで、大学受験の対策もどんどん早くなっており、小学生からそれを見据える塾もあるという。現場の声を聞いた。【前後編の後編】
昔と比べ遥かに難化した医学部入試
首都圏にある中堅塾チェーンで室長を務めるNさん(40代/男性)が、「医学部人気」の実態を語る。
「医学部受験は20~30年前と比べて遥かに難化しました。かつては偏差値が50台でも入れる医大がありましたが、今では最低でもMARCHレベルの学力が求められます。不安定な社会情勢のなか、最近の子はとにかく安定志向が強く、医学部人気は高止まりした状態です。東大に受かる学力があっても、あえて近県の国立大の医学部を選ぶのは“優秀な子あるある”です」
医師という職業の社会的評価は高く収入も安定しており、子どもが憧れるのも無理はないが、関東の医大で教授を務めるMさん(50代/男性)は、小学生の頃から医学部受験を意識した勉強をすることに疑問も抱くという。
「我々としては、優秀な子が医学部を選んでくれるのは有り難いですが、現実的には親の経済力が物を言う状況になっている印象は否めません。医師になった理由で最も多いのは、恐らく“親が医師だったから”。命に関わる仕事が世襲化するのは好ましいとはいえないですし、首都圏の私立進学校出身者に合格者が偏ると、地方の医師不足はさらに進んでしまう。また、過剰なエリート意識を持っている医学生もいて、心配の種は尽きません。
『小さい頃からずっと医師になるのが夢だった』という子もいますが、開業医の一人っ子などでは、親が強いプレッシャーをかける例は少なくありません。『本当は医学部以外に進みたかった』と話す学生や医師はいくらでもいます。一言で言えば親のエゴですね。
東大や京大など、難関大の医学部に入りたいなら話は別ですが、“普通の医学部”なら高校でしっかり勉強すれば十分に合格圏に入れるはず。医師は毎年1万人近く誕生しており、決して特別なエリートではありません。まして小学生から医学部コースの塾に入るなんて……正直、理解しがたいです」
