*09:00JST パキスタン外交の将来リスク【フィスコ・コラム】
米国・イラン停戦の仲介役を果たしたパキスタンが国際社会の評価を高めそうです。中長期的に諸外国との友好関係を構築できれば、国内経済は底上げされるでしょう。ただ、成長著しい隣国インドとの軋轢はますます激しさを増し、新たな紛争の火種になりかねません。
関税政策の憲法違反やエプスタイン問題と、トランプ米大統領が政権運営で窮地に立たされていた経緯を見ると、イランに対する軍事攻撃で失地回復を狙ったとの指摘も頷けます。しかし、欧米からの制裁で困窮に陥っていたイランの徹底抗戦は、トランプ氏にとって計算違いだったはず。収拾のつかない事態が懸念されたなかで停戦が実現すれば、橋渡しをしたシャリフ・パキスタン首相はノーベル平和賞の最有力候補でしょう。
パキスタンが米国とイランの仲介役を担うことができたのは、両国との独特な絆が背景にあります。米国とは安全保障や対テロ協力を通じた長年の関係に基づき、一定の信頼と対話ルートを保持。一方、イランとは国境を接し、エネルギーや地域安定の観点から実務的なつながりがあります。
パキスタンの国内総生産(GDP)は約4000億ドルで世界40位台。2023年にはインフレ率も一時40%近くまで上昇するなど通貨安と物価高が同時に進みました。その後も外貨不足や対外債務への依存といった構造問題を抱えながらも、国際通貨基金(IMF)支援などで最悪期は脱したもようです。今後、国際社会からの信頼が高まれば、友好関係の構築による交易の拡大が経済の回復につながる可能性もありそうです。
ただ、GDPランキングで上位躍進中のインドはそんなパキスタンに対する警戒感を一段と強めるでしょう。両国はカシミール地方を巡って長年対立し、国境線沿いでは小競り合いが繰り返されてきました。近年は軍備増強やナショナリズムの高揚から、対立は質的にも強まっています。しかも両国はいずれも核兵器を保有しており、局地的な衝突であってもエスカレーションのリスクは極めて高い構図です。
パキスタンが国際社会で存在感を高めるほど、インド側は戦略的な圧力と受け止める可能性があります。とりわけ米国や中東諸国が今後パキスタンに接近すれば、地域の力学は一段と複雑化するでしょう。外交的な評価がそのまま安全保障環境の安定につながるとは限らず、むしろ新たな緊張を生み出す事態も考えられます。パキスタン外交の将来は、評価向上による経済的な追い風と、インドとの対立激化という逆風が同時に吹き荒れそうです。
(吉池 威)
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