*16:18JST アネスト岩田:オイルフリー圧縮機が成長の核、利回り5%の高配当も魅力
アネスト岩田<6381>は、空気圧縮機や真空機器、塗装機器・設備を手掛ける産業機械メーカーだ。1926年創業で2026年に100周年を迎える。ハンドスプレーガンで国内トップシェア、小形圧縮機で国内2位のポジションを有する。事業はエアエナジー事業(圧縮機・真空機器)とコーティング事業(塗装機器・設備)で構成され、圧縮空気の供給から塗装まで一貫して提供できる点が特徴だ。スプレーガンは圧縮空気を必要とするため、両事業のシナジーがあり、単品販売にとどまらない提案力を持つ。収益モデルは製品販売に加え、保守や部品供給などのアフターサービスも組み合わせたストック型の側面を持つ。
2026年3月期第3四半期累計の連結業績は、売上高394億円(前年同期比1.3%減)、営業利益37億円(同18.1%減)と減収減益となった。減益の主因は、米国における塗装機器販売の低迷や中国の設備投資停滞に加え、人件費増やM&A関連費用など販管費の増加だ。地域別では、日本はオイルフリー圧縮機(潤滑油を使わず高品質な空気を供給する装置)や塗装設備販売が伸び増収を確保した。一方、米州は販路確立の遅れから塗装機器販売が低迷し、中国は圧縮機需要の減速が影響した。欧州も主力スプレーガンの需要一巡で減収となったが、足元では持ち直しの兆しが見られる。
ただし、業績は第3四半期末から回復傾向にある。国内の圧縮機販売は堅調に推移し、欧米ではスプレーガンの販売台数が増加に転じている。中国でも輸出を中心に持ち直しの動きが見られる。もっとも回復は緩やかであり、力強さには欠ける状況だ。通期見通しは売上高580億円(前期比6.6%増)、営業利益55億円(同6.0%減)と増収減益を見込む。増収は需要回復を織り込む一方、利益は成長投資や組織改革コストの継続により圧迫される見通しだ。これら費用は2027年頃まで継続する可能性がある。
今後の注目点は高付加価値領域の拡大だ。特にオイルフリー圧縮機は医療や食品、半導体などクリーン環境での需要が高く、収益性の改善に寄与する。また中形圧縮機の開発とインド市場での展開が新たな成長ドライバーとなる見込みだ。米国の塗装機器事業も販路再構築が進んでおり、販売体制強化による回復が期待される。市場環境としては、省人化やDXを背景とした設備投資需要が底堅く推移しており、同社にとって追い風となる。一方で中小企業の投資抑制や地域ごとの需要格差はリスク要因だ。
競争優位性は、オイルフリー技術と、多様な液体の塗装・塗布を可能とする独自の霧化技術にある。空気圧縮機においては、海外大手が大形機中心であるのに対し、同社は小形・中形領域で高い技術力を持ち、ニッチ市場で優位性を確立している。またスプレーガンにおいては長年の実績に裏付けられたブランド力と販売網により、価格競争に陥りにくい構造を持つ。財務面では安定した利益創出力を維持しているが、足元は投資先行により利益が圧迫されている局面だ。
中期経営計画では2028年3月期に売上高620億円、営業利益61億円、ROE11%を目標に掲げる。成長戦略の柱はオイルフリー圧縮機の拡販、インド市場の強化、アフターサービスの拡大、そしてM&Aだ。M&Aには3年間で150億円以上の投資枠を設定しており、既存事業と親和性の高い周辺領域を中心に、販路や技術、用途開発力の獲得を通じて事業拡張を進める考えだ。新規分野への本格展開はその次の段階と位置付ける。また組織面ではエリア制とCXO体制を導入し、海外ガバナンスの強化と意思決定の迅速化を進めている。これにより収益管理の精度向上とコストコントロールの改善が期待される。長期的にはガス圧縮分野など新市場への展開も視野に入るが、これらは立ち上がりに時間を要するため、短期の業績寄与は限定的だ。
株主還元については、2026年3月期の年間配当を83円(前期比38円増)とする計画で、配当利回りは約5%と高水準だ。DOE7.0%~7.5%を目安に安定配当を継続する方針に加え、自己株取得も計画している。資本配分は成長投資を優先しつつ、余剰資金を株主還元に充てるバランス型の戦略だ。
総じて同社は、足元では海外需要低迷と投資負担により減益局面にあるものの、構造改革と高付加価値化により中期的な成長余地を有する企業だ。オイルフリー圧縮機や中形機の拡大、海外市場の回復が進めば収益改善余地は大きい。高配当も相まって、業績回復局面での株価見直し余地に注目したい。
<YS>