*13:06JST 富士紡HD Research Memo(6):先端半導体需要を取り込み、成長投資と技術進化で一段上の飛躍へ
■富士紡ホールディングス<3104>の今後の見通し
1. 2027年3月期の業績見通し
2027年3月期の連結業績予想は、売上高52,700百万円(前期比14.7%増)、営業利益9,200百万円(同13.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益6,300百万円(同12.2%増)、EBITDA13,447百万円(同17.8%増)と、連続して力強い2ケタの増収増益を見込んでいる。
2. セグメント別業績見通し
(1) 研磨材事業
売上高24,500百万円、営業利益7,000百万円への到達を予想する。生成AI関連投資の拡大トレンドが継続し、最先端ロジック及びメモリ向けCMPパッドが引き続きけん引役となる。
(2) 化学工業品事業
第5工場の稼働効果をフルに享受し、売上高18,300百万円、営業利益1,700百万円を見込む。半導体を含む電子材料市場の拡大トレンドを背景に、機能性材料を中心に旺盛な需要が継続する。
(3) 生活衣料事業
売上高6,000百万円、営業利益300百万円を計画。2026年3月期下期から着手した構造変化への対応策(D2C・ネット販売の強化、SNSを活用した若年層へのリーチ、国内回帰・海外販路の多角化等)を本格稼働させる。このテコ入れの成果が数字として表れるのは2027年3月期下期と想定しており、事業の反転攻勢を図る重要な1年となる。
(4) その他(化成品)事業
売上高3,900百万円、営業利益200百万円と黒字転換を予想。医療機器用部品の新規需要獲得と、前述したIPMの減損による償却費低減が利益を押し上げる。
3. 設備投資の見通し
2027年3月期の設備投資額は8,079百万円(前期比2百万円減)を見込んでいる。研磨材事業において、研究開発、環境投資並びに生産性向上投資を含む能力増強投資を実施する。
4. 旺盛な半導体需要に対応する計画的なCMP供給体制
半導体市場の回復とAI需要の拡大に伴う、CMPソフトパッドの供給懸念に対し、同社は機会損失を一切生じさせることなく需要を十全にカバーしている。供給力確保は、場当たり的な投資ではなく、計画的かつ段階的なロードマップに基づいている。2029年3月期途中までに過剰な設備投資を避け、既存設備の最適化・稼働率向上で対応する。大分工場のポテンシャル最大化に加え、AI・ロボット導入による生産性向上を推進する。中長期的な飛躍を見据え、2029年3月期後半に壬生川・大分工場での大規模増設ラインを稼働させる。短期・中期・長期の3段階で供給力を高める戦略は、ROICを意識した過剰投資の抑制と需要の確実な取り込みを両立させる、洗練された経営管理の証左と言える。
5. マクロ環境の不確実性と価格転嫁のタイムラグ
中東情勢の緊迫化や、長期化する経済安全保障上の分断、そしてエネルギー価格・原材料価格の高止まりといったマクロ環境の不確実性に対し、同社は調達先の多様化を進めることで原材料の安定確保に奔走している。地政学的リスクに起因する調達が不安定な原材料が一部に存在することは事実であるが、代替供給ルートの機動的な確保により、現時点で生産活動や顧客からの受注にネガティブな影響は一切発生していない。しかし、コスト変動に対する防衛策である販売価格への転嫁においては、固有の課題が存在する。化学工業品の受託加工や研磨材の長期供給契約においては、原材料価格が上昇した瞬間にリアルタイムで売価を引き上げることは難しく、顧客との価格改定交渉が妥結し、それが売上高として計上されるまでに一定のタイムラグが生じる。そのため、原価上昇の初期局面では、同社が一時的にコスト増を負担せざるを得ない構造となっている。
この点に関して、同社は保守的かつ透明性の高いガイダンスを市場に提示している。2027年3月期の営業利益予想(9,200百万円)を策定するにあたり、価格転嫁のタイムラグに伴う利益の押し下げ効果を、あらかじめ研磨材事業で約5%、化学工業品事業で約10%の営業利益減少要因として織り込んでいる。この事実が意味するインサイトは重要である。同社が公表した13.0%増益というガイダンスは、相当程度のリスクバッファーを含んだ保守的な数字であり、期中において価格改定が順調に浸透しタイムラグが解消されれば、織り込まれたマイナス要因が剥落し、営業利益がさらに上振れするポテンシャルを秘めていると弊社は考える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水 啓司)
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