*16:01JST 日本精機:PBR0.6倍台・配当利回り3%超の割安水準、3期連続増配と構造改革の進展を評価
日本精機<7287>の時価総額は、2030年3月期の営業利益280億円という「成長加速ステージ」の目標を織り込めば、PER15倍で2,500億円規模への到達が視野に入る。現状の時価総額は約1,584億円(2026年8月26日時点、株価2,710円)であり、いまだ約6割の上昇余地を残していると考えている。PBRも0.6倍台と1倍割れだ。また、足もとの年間配当予想90円に基づく配当利回り3%台と、インカムゲインの魅力も引き続き高い水準にある。
なお、同社は車載計器やHUD(ヘッドアップディスプレイ)を主力とする自動車部品メーカーであり、二輪車・四輪車用計器に加え、民生機器部品やITソリューションなど多角的に事業を展開している。特にHUDは世界首位となる約23%のシェアを獲得しており、国内外の自動車メーカーにおける先進運転支援システムの普及とともに継続的に需要が拡大している。売上の約8割を占める車載部品事業は同社の収益基盤であり、四輪車・二輪車用計器に加えて成長余地の大きいHUDの拡販が進められている。
同社の強みは、第一に二輪車計器/HUD事業で世界的なシェアを獲得していることである。特に二輪用計器は世界トップシェアの約23%を獲得している。二輪車向け計器は近年、ASEAN、インド、ブラジルを中心としたグローバルサウスでの販売が引き続き極めて好調に推移している。第二にHUD事業の技術優位性であり、表示性能や安全性、耐久性を重視する自動車メーカーの要求に応えながら、開発から販売までの一貫した体制を黎明期から培ってきた。HUDは今後のEVシフトなどの潮流の中でも需要が高まる技術であり、新機種の立ち上げとともに今後の高付加価値製品としての成長が期待される。
さらに、2026年10月に予定している東洋電装の完全子会社化により、従来の「表示(HUD・計器)」に「操作(スイッチ類)」の技術が融合し、次世代HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)領域における唯一無二のソリューション提供が可能となることで、さらなる競争優位性の確立が期待される。
2027年3月期第1四半期の連結業績は、売上収益83,252百万円(前期比9.2%増)、営業利益2,191百万円(同44.0%増)、親会社に帰属する当期純利益は1,517百万円(同116.2%増)となり、増収かつ大幅な増益で着地した。車載部品事業においては、中国市場での四輪車用計器の苦戦が見られたものの、HUDの新機種立ち上げ・販売増加や、ASEAN、インド、ブラジルを中心としたグローバルサウスでの二輪車用計器の販売が引き続き堅調に推移し、業績を大きく牽引した。利益面では、HUDの増収効果に加え、原価管理およびコスト管理の徹底、さらには前年同期に発生した為替差損が為替差益へと転じたことなどが寄与し、大幅な増益を達成した。
「中期経営計画2026」の最終年度となる2027年3月期の目標数値については、売上収益320,000百万円(前期比2.4%減)、営業利益14,000百万円(同20.4%増)と、期初計画が据え置かれている。2027年3月期第1四半期時点での通期計画に対する進捗率は、売上収益が26.0%、営業利益が15.7%となっている。2026年3月期の実績(11,624百万円)からは大幅な増益を計画しており、重点施策として(1)四輪・HUDの成長性と収益性を高める事業戦略の実行、(2)新興市場における二輪車用計器の販売加速、(3)イノベーティブな製品・サービス・ビジネスの創出である。HUDについては2021年3月期以降、売上は拡大基調であり、今後も自動車の安全機能強化を追い風にもう一段高いレベルの成長を目指している。また、アセアン・インド・ブラジルといったグローバルサウスエリアを中心に二輪車市場は引き続き大幅な需要増が見込ており、同社は各地域の多様なニーズに対応した製品開発を加速し、グローバルに最適化された供給体制を構築することで、市場における競争優位性の確立を目指している。
また、2026年10月に完全子会社化を予定している東洋電装との技術融合が最大の注目点となる。今後は、同社が強みを持つ「表示(計器・HUD)」技術と、東洋電装が有するスイッチ類などの「操作(入力)」技術を統合した、次世代HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)ソリューションの開発を加速させる。
さらに、8月28日には、株式会社デンソーのヘッドアップディスプレイ事業の譲受を発表した。対象事業は、デンソーおよびその子会社(デンソーグループ)が運営するHUD製品の開発・製造・販売に係る事業となる。対象地域は、国内のほか、中国・スペイン・米国およびメキシコ。今回の事業譲受により、デンソーが有する技術・製造ノウハウを承継し、同社の開発・製造基盤と組み合わせることで、生産・開発の最適化・効率化を進め、コスト競争力を高めることとなる。また、デンソーのHUD事業が有する技術・ビジネス基盤等を活用し、幅広い顧客ニーズに応える開発力と提案力を強化することで、供給体制の一層の拡充と販売機会の拡充を図ることが可能となる。事業譲受後、同社グループの人員リソースを活用して運営を行う予定で、譲受する生産設備については、本事業譲受の実行から一定期間内に同社グループで受け入れ体制を整備した上で、順次、移管を行う。
なお同社は、次の中期経営計画を成長加速ステージと設定しており、2030年3月期に売上収益で400,000百万円、営業利益で28,000百万円、ROE8.0%を目指すことを公表している。株主還元については、2025年3月期から2027年3月期までの3年間で総還元性向80%を掲げており、2026年3月期の年間配当は、前期から30円増配となる80円(中間40円・期末40円)を達成した。さらに2027年3月期は、通期業績予想を据え置く中で増配姿勢を維持し、1株当たり90円(前期比10円増配)と3期連続の増配を見込んでいる。配当利回り3%台と合わせ、現状のPBRは0.6倍台であり、株式指標を見ても魅力的な水準にある。
総じて、短期的には中国市場での日系・欧州系メーカーの苦戦や地政学リスクに伴うコスト動向といった不透明感はあるものの、中期的には収益の柱である二輪車用計器の好調維持に加え、HUDの新機種立ち上げや欧州事業の収益改善に向けた構造改革が着実に進展している。資本効率を意識した株主還元も加わり、持続的な企業価値向上に向けた取り組みが鮮明である。2027年3月期の増益計画の達成、および戦略的買収による統合効果の進捗に引き続き注目していきたい。
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