*11:06JST アクモス Research Memo(6):「中期経営計画2028」の達成に向け、成長投資と収益性向上の両立を推進
■アクモス<6888>の中長期の成長戦略と今後の業績見通し
1. 「中期経営計画2028」見直しの背景と概要
同社は、2024年7月に開始した「中期経営計画2027」を見直し、計画期間を1期延長した「中期経営計画2028」をスタートさせた。背景には、人財投資の効果発現までに想定以上の時間を要したことや、事業ごとに成長施策の進捗に差が生じたことがある。当初計画で示した各期の計画数値は1期ずつ繰り延べられ、売上高10,000百万円の到達時期は2027年6月期から2028年6月期となった。ROE目標も、当初の3期平均15%以上から、2028年6月期単年で15%以上を目指す形に改められた。一方で、採用人員の拡大や受注残高の積み上がりなど将来成長に向けた基盤整備は着実に進展している。このため、成長戦略そのものに変更はなく、Business(事業)、Members(人財)、Value(付加価値)の3つの柱を維持している。
Businessでは、消防防災、ネットワーク、行政DXなどの成長分野への投資を進めるほか、M&Aを活用して事業領域と顧客基盤の拡大を図る。Membersでは、人財採用や教育制度の拡充を進め、人的資本経営の強化に取り組む。Valueでは、高付加価値サービスや高収益案件の比率を高めることで収益力向上を目指している。
最終年度である2028年6月期には、売上高10,000百万円、営業利益1,000百万円、経常利益1,000百万円、ROE15%以上の達成を目標として掲げている。
2. 2026年6月期における中期経営計画の進捗状況
「中期経営計画2028」の2期目となる2026年6月期は、前述のとおり売上高成長とM&A推進の面で前進が見られた。特にシステムズサービスの子会社化により金融業界向け顧客基盤が拡充し、ITソリューション事業の成長に寄与した。また、ITインフラ分野でも官公庁案件が順調に推移しており、成長戦略の成果が徐々に業績へ表れ始めている。
一方で、利益面では、人財確保や成長投資を優先したことから収益性が一時的に低下した。2026年6月期末のグループ従業員数は546名と前期末の490名から56名増加しており、同社が中期経営計画の重点施策である人的資本投資を積極的に進めたことがうかがえる。採用拡大や教育・育成に伴う費用増加が短期的には利益を圧迫したものの、将来の受注拡大に対応する組織基盤強化を目的とした先行投資の側面が大きい。
2026年6月期末の全社受注残高は前期末比27.7%増の2,952百万円と積み上がっており、翌期以降の事業拡大に向けた基盤は着実に強化されている。売上高10,000百万円という最終目標との比較ではまだ道半ばであるものの、売上規模拡大、M&A推進、人財の確保、受注残高増加という点では、計画達成に向けて一定の進捗が確認できる内容となっている。
3. 中期経営計画後半2期の方向性
同社は2027年6月期から始まる中期経営計画の後半2期において、「成長領域の拡大」と「事業基盤の強化」を同時に進める、中期経営計画達成に向けた本格的な成長フェーズへの移行を目指す。
2026年6月期の売上高実績7,499百万円から見ると、2028年6月期に売上高10,000百万円を達成するためには、今後約2,500百万円の上積みが必要となる。一方で、2027年6月期の売上高予想は8,000百万円であり、計画達成には2028年6月期にさらなる成長加速が必要となる。したがって、既存事業のオーガニック成長のみではなく、戦略的な施策を複合的に展開することが求められる。
第1の戦略は、収益性及び成長性の高い事業へのシフトと受注拡大である。後半2期を通じてITソリューション事業の増収率を15%以上、ITインフラ事業の増収率を20%以上とする目標を掲げている。自治体向けシステム、消防防災分野、AI・GIS関連サービスなど、同社が強みを持つ市場ではデジタル化需要が継続すると見込まれる。既存顧客への深耕営業を進めるだけでなく、クラウド化やAI活用ニーズを取り込むことで単価上昇と顧客基盤拡大を目指す考えである。加えて、第三者保守サービスが圧迫要因となっているITサービス事業については、第三者保守サービスの収益改善策を展開することにより増収率5%以上を目標としている。
第2の戦略は、首都圏を中心としたM&Aを推進し、新たなグループ会社の獲得を進めることである。システムズサービスの子会社化に続き、グループ各社の技術や顧客基盤を統合することでクロスセルを強化し、売上機会を増やしていくと見られる。さらに成長領域でのM&Aを継続できれば、売上規模拡大の加速要因となる可能性がある。
第3の戦略は、人財への継続投資である。IT業界ではエンジニア不足が長期化しており、案件拡大に対応するためには採用力と育成力が重要となる。同社は中期経営計画の重点テーマとして人財戦略を位置付けており、技術者数の増加、高度人財の育成、生産性向上を通じて事業拡大を支える考えである。
売上高10,000百万円を達成しても利益成長が伴わなければ企業価値向上にはつながらない。そのため、高付加価値案件へのシフトや事業ポートフォリオの見直しを進め、成長投資と利益創出のバランスを最適化する方針となっている。
4. 中期経営計画達成に向けたリスク要因
「中期経営計画2028」の達成に向けた主なリスクは、(1) 人財の確保と育成、(2) M&A及びPMIの2点と考えられる。
(1) 人財の確保と育成
人財面では、エンジニア不足が続く状況下で、高度人財やプロジェクトマネジャーを継続的に確保・育成できるかが重要となる。Growth(成長投資)領域の1つである消防防災事業では、プロジェクトマネジャーの確保・育成が受注拡大のカギを握る。また、Core(維持伸長)領域では、AIの実装や活用に関する需要拡大に対応するための体制整備が求められる。このため、単に人員数を増やすだけでは不十分であり、顧客の業務知識を保有し、AIを活用できるエンジニアの確保・育成が不可欠である。こうした人財の確保・育成が計画どおり進まなければ、案件の獲得機会を逸し、売上高や利益の伸びに影響を及ぼす可能性がある。
(2) M&A及びPMI
現状の業績予想を踏まえると、売上高10,000百万円の達成にはオーガニック成長に加え、M&Aによる成長機会の取り込みが不可欠になると見られる。したがって、案件ソーシングが計画どおり進まず、M&Aが実施できない場合や、買収実施後のPMIが想定どおり機能しない場合には、中期経営計画目標の達成に遅れが生じる可能性がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 森本 展正)
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