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【インボイス制度・徹底解説】フリーランス事業者1400万人が収入減の危機に直面、年金生活者にも影響大

Q3:制度開始で困るのは?

 では、免税事業者のAさんが「課税事業者」になるとどうなるか。まず、これまで「益税」として収入になっていた40円をそのまま納税することになり、その分手取りが減る。個人事業主や零細企業にとっては大きな負担だ。そればかりか、インボイスを発行するために経理の手間やコストも増える。

 一方、Aさんがインボイス制度に登録せず「免税事業者」として事業を続ける場合も問題はある。

 インボイス発行がなければ、取引先の飲食店(課税事業者)は「仕入れ税額控除」を受けられないため、本来Aさんが負担すべきはずの消費税40円をそのまま被ることになるからだ。図解のケースでは、納める税金がこれまでの60円から100円に跳ね上がることになる。

 ここまで聞くと、あくまで事業者間の話に思えるかもしれないが、この先は消費者に影響が及ぶことが予想される。

「これまで通りAさんが免税事業者のまま事業を続けても、インボイス制度導入を機に課税事業者に転じても、AさんとB社どちらかがコスト増となるのは避けられません。最終的には価格に転嫁される可能性が高いので、消費者はさらなる物価上昇を覚悟しておくべきでしょう」

 サラリーマンの副業や、定年後に自営で商売を始める人などもインボイス制度と無縁ではいられなくなる。決して他人事ではないのだ。

Q4:インボイス登録しない事業者はどうなる?

 インボイス登録(課税事業者への変更)はあくまで任意であり、強制ではない。年間売上高が1000万円以下の個人事業主が「免税事業者」として事業を継続すれば、これまで通り「益税」を収入とすることができるので、損はないように思える。しかし──。

「前述の通り、今後、インボイスを発行できない免税事業者との取引は『仕入れ税額控除』ができなくなるので、商品の卸先や取引先企業(課税事業者)の消費税負担が増大することになります。そのため、免税事業者との取引を敬遠する企業も増えてくるでしょう。免税事業者に対し仕入れ価格の値下げを要請したり、これまでの取引が打ち切られてしまうケースも想定されます」

 最悪の場合、免税事業者のままでは仕事そのものを失いかねないのだ。

「政府や公正取引委員会は、課税事業者が免税事業者に対して圧力や取引価格引き下げなどを強要しないよう呼びかけており、下請法違反で取引を是正してもらえる可能性はあります。ただし、その後の取引に全く影響がないとは断言できません」

 課税事業者に対しては制度実施後6年間、インボイス以外の請求書でも一定割合の「仕入れ税額控除」を受けられる経過措置が設けられているので、免税事業者がただちに排除されることはないかもしれない。しかし、いずれはインボイスが発行できる課税事業者のほうが有利となる可能性が高いようだ。

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