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【インボイス制度・徹底解説】フリーランス事業者1400万人が収入減の危機に直面、年金生活者にも影響大

インボイス制度の仕組みと生活への影響を徹底解説(写真:イメージマート)

インボイス制度の仕組みと生活への影響を徹底解説(写真:イメージマート)

 大きな政治的混乱と国民生活への打撃をもたらすとみられている「インボイス制度」。影響が大きいフリーランスの事業者は国内に約1600万人とされ、その約9割にあたる約1400万人が消費税納税の負担増危機に直面するともいわれている(「インボイス制度を考えるフリーランスの会」の公表資料より)。具体的にはどのような仕組みなのか。問題点、生活への影響を解説していく(「」内は税理士の山本宏氏)。

Q1:そもそも「インボイス」制度とは?

「インボイス制度の正式名称は『適格請求書等保存方式』と言います。インボイス(適格請求書)とは、国が認めた新しい請求書の様式で、各事業者はこれに則った対応を求められるようになります。今後、インボイスのない商取引は、消費税計算の際の『仕入れ税額控除』(後述)が認められなくなり、課税事業者の税負担が重くなるなど、大きな影響が予想されます」

Q2:新制度で何が変わる?

なぜ「インボイス」導入で個人事業主が困るのか(イラスト/福島モンタ)

なぜ「インボイス」導入で個人事業主が困るのか(イラスト/福島モンタ)

 インボイス制度を理解するためには、私たちが買い物や飲食で支払った消費税がどう「納税」されるかの仕組みを押さえておく必要がある。図を参照しながら具体的な流れを見ていこう。

 基本的に、消費者は買い物や飲食の際、消費税(標準税率10%、酒類・外食を除く飲食料品などは軽減税率8%)が上乗せされた代金を販売者(小売店や飲食店)に支払っている。だが販売者は、客から受け取った消費税をそのまま納税しているわけではない。

 図のように客(消費者)が飲食店(B社)で1100円(うち消費税100円)のサラダを注文した場合、飲食店側が客から受け取る消費税は100円。飲食店は野菜を仕入れる際、農家(個人事業主)のAさんに440円(うち消費税40円)を支払っているので、販売時に受け取った100円から仕入れ時に支払った40円を「仕入れ税額控除」として差し引き、残りの60円を消費税として納めている(実際には1取引ごとではなく、年間の課税売上高・仕入額で最終計算される)。

 では、仕入れ先に支払われた40円の消費税はどうなるか。農家のAさんが年間(課税)売上高1000万円以下で消費税を納める義務がない「免税事業者」だと、現行制度では飲食店から受け取った消費税40円分がそのまま自身の収入となっていた。これが「益税」と呼ばれるものだ。

「政府は『取引の正確な消費税額と消費税率を把握』することを目的としていますが、長年、免税事業者から徴収し損ねていた『益税』をなくすことが大きな狙いと考えられます。制度の導入で2500億円の税収増が見込まれています」

 今後、Aさんのような免税事業者は「課税事業者」となって消費税を納めるか、「免税事業者のまま事業を続ける」か選択を迫られることになる。

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