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【インボイス制度・徹底解説】フリーランス事業者1400万人が収入減の危機に直面、年金生活者にも影響大

Q5:どんな特例・経過措置がある?

 免税事業者が課税事業者になる場合の「特例」も設けられている。

「消費税負担を軽減するために、消費税の納税額が売上税額の2割に軽減される『2割特例』があります。たとえば、売り上げが1100円(消費税100円)なら納税額は20円で済む。ただし、これは2023年10月1日~2026年9月30日までの経過措置なので、特例終了後にいきなり納税額が高くなってしまいます」

 また、小規模事業者には、受け取った消費税額から仕入れ時に支払った消費税額を差し引く計算をせずに、業種ごとに一定の割合(みなし仕入率)で計算する「簡易課税」制度もある。たとえば小売業のみなし仕入れ率は80%。一般課税よりも納税額が減るかは事例ごとになるが、経理の手間はかからないだろう。

 とはいえ、問題はまだまだ多い。

「免税事業者から課税事業者になり、消費税の納税が事業を圧迫する事態に直面しても、2年間は免税事業者に戻ることができません。法人税と違って、消費税は欠損金を出していても(赤字でも)納付しなければいけない税金ですから、そうした点も踏まえて慎重に判断する必要があります」

 個人事業主や零細企業が「免税事業者」のままでいるか「課税事業者」に転じるかの判断を誤れば死活問題になりかねない。

「あまりに複雑な制度設計のため、制度開始を前に対応困難な事業者が続出しています。そもそも8%、10%という複数税率を廃して消費税制度を簡素化するほうが官民の事務コストも減って合理的なはずですが、そうはならなそうです」

 生活苦をもたらしかねないインボイス制度を理解することは、生活防衛の第一歩だ。

※週刊ポスト2023年9月8日号

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