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【もう1つの2024年問題】いよいよ団塊世代がすべて後期高齢者に 政府が切り札として進める「全世代型社会保障」の高い壁

決して楽ではない高齢者の暮らし

 しかしながら、全世代型社会保障への移行は政府の思惑通りには進みそうにない。高齢者の暮らしも決して楽ではないからだ。

 厚生労働省の国民生活基礎調査(2022年)によれば、高齢世帯の平均所得金額は318万3000円で、「高齢者世帯以外の世帯」の665万円と比べて半分程度である。

 一方で、世帯人員1人当たりの平均所得金額は、65歳以上が206万5000円に対し、29歳以下は245万1000円、30代は221万9000円、40代は239万5000円で大きな差があるわけではない。こうした点が「全世代型」を目指す理由の1つとなっている。

 とはいえ、年齢を重ねるにつれて所得は減り、70歳以上は194万6000円だ。厚生労働省の別資料によれば75歳以上の過半数は150万円未満である。

 しかも、公的年金制度には将来の年金財政や現役世代の負担を考え、年金の給付額を物価や現役世代の賃金の伸び率よりも抑制する「マクロ経済スライド」という仕組みがある。物価高の伸びに年金額の上昇が追いつかないということは、実質的な減額である。「マクロ経済スライド」によって、年金受給世帯における相対的貧困率(等価可処分所得の中央値の半分に満たない世帯員の割合)が高まることを懸念する声もある。

後編に続く

【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。主な著書に、ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)のほか、『日本の少子化 百年の迷走』(新潮選書)などがある。

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