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才能ある子もそうでない子も幸福にしない「日本の義務教育」というシステム

義務教育は本当に“平等なもの”と言えるのか(写真はイメージ)

義務教育は本当に“平等なもの”と言えるのか(写真はイメージ)

 多様性が叫ばれる昨今、「一人ひとりが公平であるべき」という社会の空気感は年々強まっている。だが、新刊『平等バカ-原則平等に縛られる日本社会の異常を問う-』(扶桑社新書)を上梓した早稲田大学名誉教授・山梨大学名誉教授(生物学者)の池田清彦氏は、「今の日本は、上っ面の“平等”を追い求めた結果、かえって不平等を招き、非合理極まりない事態に陥っている」と話す。「平等が正義」とされる社会風潮がもたらす弊害について、池田氏が指摘する。

「自由を標榜する日本では、誰もがお金を稼げる仕組みが整っています。資本家の側に回るのか、あるいは労働を続けて生計を立てるのか、はたまたその両方で生活するのかは個々の自由であり、表向きは『機会の平等』が保障されています。バカで怠け者だったら貧乏になるけれど、才覚を生かしたり努力したりすればお金持ちになれるとされている。

 しかし、現実はそうではありません。例えば株は誰でも自由に買えるけれど、大金を投資して莫大な利益を得られる人は少数で、日々の暮らしに精一杯で株を買う余裕などない人が大半なのだから、機会の平等などあってないようなもの。結果が不平等になるのも、格差が広がるのも当たり前です」(池田氏・以下同)

 このような「経済的格差」が生まれる元凶には、とりわけ「教育格差」によるところが大きいと池田氏は指摘する。

「日本学生支援機構の平成30年度学生生活調査によると、大学生の子供を持つ家庭の平均年収は862万円。東大生に限れば、親の世帯年収は約6割が950万円を超えています(2018年学生生活実態調査)。この事から、ある程度の富裕層の子供のほうが、学費の安い国立大学に入る学力を付けやすい事が分かります。

 これを意外な事実として受け取る人は果たしてどれくらいいるでしょうか。多くの人は『それは当たり前だろう』と納得するのではないでしょうか。一般的には、どれくらい親が教育に投資したかが子供の学力、ひいては学歴を左右するであろうことは、今の世の中を見ていれば容易に推察できます」

 また、大学受験そのものも富裕層に有利にできている。

「1校当たり数万円かかる受験料は、一般家庭からすればバカになりません。何校も受験出来る子の方が、そうでない子に比べて進学できる可能性が高くなるのは明らかです。総合型選抜(旧AO入試)も、習い事や海外旅行などの豊かな経験を重ねている方が有利になる場合もありますから、親の年収が関係していると言えるでしょう。

 しかし、だからといって貧困家庭に育った層が大学進学を諦めてしまえば、親と同様に経済的弱者の道を歩むことになる可能性が高い。大学進学率が50%を超えている日本では、大卒であることの価値自体はあまり高くありません。しかし、国民全体の学歴が底上げされた分、中卒や高卒では社会の低層に沈んだまま浮かんで来れなくなるリスクが高まるのです。このような『格差の再生産』によって、埋めようのない格差は解決の術を持たぬまま拡大していくのです」

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