NHK大河ドラマ『どうする家康』の放送開始から3か月が過ぎた。前回の放送では松本潤演じる徳川家康が初めて上洛した場面が描かれるなど、物語は若き家康が有力武将として世に出ていく段階を迎えた。よく知られているように、のちに江戸幕府を開くまでには織田信長や豊臣秀吉との関係において、家康自身に様々な転機が訪れるが、今回、歴史作家の島崎晋氏が注目するのは、その「経済力」である。島崎氏は、秀吉による関東移封前には「少なくとも3つのターニングポイント」があるという。
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NHK大河ドラマ『どうする家康』は何やかやと言われながらも、「ガチ勢」とも呼ぶべき一定のコアな視聴者に支えられ、SNS上では感想や考察など、たくさんの書き込みがなされている。
前回「家康、都へ行く」(第13回。4月2日放送)では、主人公の徳川家康(松本潤)が、織田信長(岡田准一)の後ろ盾で将軍となった足利義昭(古田新太)の命令により初めて上洛。義昭や幕臣の明智光秀(酒向芳)、北近江の浅井長政(大貫勇輔)、商人の茶屋四郎次郎(中村勘九郎)らとの出会いが描かれた。
このなかで、家康の運命にもっとも大きな影響を及ぼすのは茶屋四郎次郎なのだが、後述するとおり、その効果がはっきりと表れるのは、まだだいぶ先である。
タイトル同様、今年の大河では主人公の家康が毎回のように「どうする?」と悩む場面が登場する。家康の生涯を通じて、死を覚悟するほどの危機に陥ったのは、一向一揆との戦い(1563-1564)、三方ヶ原の戦い(1573)、本能寺の変後の逃避行「伊賀越え」(1582)、真田軍の猛攻に晒された大坂夏の陣(1615)くらいのはず。一向一揆との戦いはドラマ第7回から第9回で描かれたが、他の3つの危機も映像化しやすいから、比較的丁寧に描かれるかもしれない。
一方、経済的な面での家康のターニングポイントはどうだろうか。合戦などに比べれば、視聴者の胸を躍らせる場面に作り上げることが難しいのではないか。