中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

「スタートアップという蟻地獄」に苦しむ起業家を見て実感する「無借金経営でよかった」

中川氏が「ブラック労働時代だった」と振り返る当時の仕事部屋

中川氏が「ブラック労働時代だった」と振り返る当時の仕事部屋

業務を大幅に縮小して地方生活も実現

 私は小さいながら、編集・PR業務に携わる会社の代表を務めていますが、資本金はすべて自らの貯金でまかない、従業員は大学時代の同級生一人だけ。その他、業務を進めるうえで必要なスタッフは、すべて外部の人間です。基本的には私と従業員の二人がバリバリ働くというやり方で、もう一人従業員が必要だな……と思うほどの量は受けない。

 会社に他の人間を入れない理由は、「口出しをされたくないから」です。信頼できる従業員の助言を受けながらも、最終的には代表である私が自分の意思で物事を決定できる状況を作りたかった。そうした経営スタイルだったからこそ、2020年8月31日をもって私は東京から佐賀県唐津市へ拠点を移すことができたのです。

 そして今は、のんびり生活を満喫しています。もしもベンチャーキャピタルから投資を受けていたら、絶対こんなことは実現できなかったでしょう。「まだお前らに投資した分は倍になってない!」なんて言われたら「へへーっ」と従うしかない。

 それと、無借金経営の良いところは、起業当初にありがちな、浮かれた気持ちを持たずに済むというのもあります。投資を受けて会社を作ると、うっかり大金を手にした気持ちになり、ついつい青山やら麻布にオフィスを構え、その賃料が毎月100万円なんてことになるケースもあるようです。さらには高級な椅子やら美術品も買い、見た目だけは立派かつ「これで私も大都会TOKYOの経営者だ……」と外に広がる夜景を見ては悦に入る。初期の頃は“ご祝儀発注”で仕事が舞い込むでしょうが、そうなると今度は月額200万円のオフィスへ移り、正社員をさらに2人雇ってしまったりする。

 しかしいつしか“バブル”は終わるもの。あとは必死の営業と金策に駆けずり回ることになる。さらには投資家への報告会という名の“公開詰問会”に参加せざるを得なくなり、頭の中は、いかにしてこのしんどい会議を乗り切るか、ばかりになってしまう……。

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