田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国でスマホ向け「ショートドラマ」が大流行、タイパ重視の若者に支持される 関連企業の株価は材料がなくても急騰

中国でスマホ向けショートドラマが大流行(Getty Images)

中国でスマホ向けショートドラマが大流行(Getty Images)

 スマートフォンの世界出荷台数は2023年の第3四半期時点で、9四半期連続で前年同期比マイナスを記録した(IDC調べ)。ハード市場では成熟化が著しいが、スマホを介したビジネスでは多様化が進んでおり、活況が続いている。

 中国では今、ショートドラマ(微短劇)が流行している。ショートドラマとは、スマホユーザー用に縦長サイズ、あるいは横長サイズで配信されるドラマである。全編の長さ(時間)は、映画1本分からテレビドラマ半分程度あるが、1話の長さは数十秒から15分程度と短い。ちょっとした空き時間、待ち時間を利用して視聴できる手軽さがタイパを重視する中国の若者たちに受け入れられている。

 調査機関・艾媒咨詢が11月に発表した「2023~2024年中国微短劇市場研究報告」によれば、昨年9~12月の新作数は64編に過ぎなかったが、今年7~9月には150編に急増している。市場規模をみると、2022年は101億7000万元(2034億円、1元=20円で換算、以下同様)であったが、2023年には前年比268%増の373億9000万元(7478億円)に達すると推計している。

 制作側からすれば、例えば伝統的なテレビドラマなどと比べれば1編の長さが短いため、その分コストが抑えられる。一般的には1話3分程度の作品が多いようだが、1話で視聴者を引き付けるポイントを作らなければならないため、展開が早くなり、エンターテイメント性が高くなる。そもそも、スマホ視聴が前提なので、豪華なセットや、芸術性の高い絵作りなどはそこまで必要ない。低コストで勝負できる市場である。

 現状では、これまでのテレビドラマ、あるいは人気ゲームを意識した作品が目立つ。天上の神や戦神、仙人、人間、妖怪などが入り乱れ戦ったり、歴史上の王朝あるいは架空の王朝を舞台にした権力闘争が繰り広げられたり、時空を超えて過去に行ったりなど、参入障壁が低い分、どこかで見たようなテーマの作品が多い。なかにはそこまで質が高くない作品も見受けられる。とはいえ、同市場では激しい競争が強いられており、前述研究報告によれば、2027年の市場規模は1000億元(2兆円)を超えると予想している。2022年における中国国内の映画館チケット収入は301億元(6020億円)に過ぎず、ビジネスとしてショートドラマはとても魅力的だ。

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