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田代尚機のチャイナ・リサーチ

【2000億円賠償請求】中国・蘇州市の土壌汚染問題が泥沼化 開発元も元の土地所有者も譲歩する気はない「毒地事件“羅生門”」

中国・蘇州の土壌汚染問題をめぐる訴訟の行方は(Getty Images)

中国・蘇州の土壌汚染問題をめぐる訴訟の行方は(Getty Images)

 中国不動産業界では醜聞が絶えない。上海陸家嘴金融貿易区開発(上海陸家嘴)は11月4日、購入した蘇州市の土地の一部が汚染されていたとして100億4393万元(2089億円相当、1元=20.8円で計算)の賠償を求める訴訟を起こした。訴えられたのは、江蘇蘇鋼集団(蘇鋼集団)と蘇州市政府系4機関だ。

 事件の発端は7年前に遡る。原告は上海陸家嘴金融貿易区の不動産開発を事業目的とする市政府系企業だが、開発用地が枯渇してきたことで、事業範囲を上海周辺に広げる方針を決め、2016年10月、蘇鋼集団の65万9500平方メートル(東京ドーム14個分)に及ぶ工場跡地の使用権を所有し開発を行う企業の株式95%分を購入した。

 取得株式の評価額は30億5000万元(634億円)であったが、この頃は蘇州市全体が不動産ブームに沸き立っていた時期で、熾烈な競売に勝ち抜いての買収であったため、価格は85億2500万元(1773億円)と大幅なプレミアムが付いている。

 この土地は、住宅、オフィスビル、研究施設、学校、ガソリンスタンドなどを、段階を踏んで開発する計画で、用地取得後、開発はすぐに始まり、一部は完成し、販売も行われている。

 建物、施設の建設を終え、9月の開校に向けて準備を進めていた蘇州(英国)リーディング学校(小中一貫教育を行う学校)は2021年6月、学校運営の認可を得るため、蘇州ハイテク区環境保護局の要請により敷地の土壌検査を受けたのだが、そこで重大な土壌汚染が明らかになった。

訴えられた蘇鋼集団の“言い分”

 上海陸家嘴が改めて第三者に調査を依頼したところ、教育施設(リーディング校、別の学校)のほか、まだ開発の行われていないマンション、商業施設、オフィスビルなどの建設予定地の土壌も汚染されていることが明らかとなった。

 2022年4月、中央環境保護監督観察チームが現地に出向き詳細な調査を行った結果が発表されている。それによれば、一部の用地において、環境基準を大幅に超える量の発がん性物質・ベンゾピレンや、防虫剤などに使われ特有のにおいのあるナフタリンなどが含まれており、使用に適さないことが明らかとなった。

 この土地は製鉄工場の跡地である。製造過程で高温に熱したコークスを大量に使う以上、土壌が汚染されていることは最初から分かっていた。十分な調査を行いその結果に基づいて売買契約を結んだはずなのだが、上海陸家嘴はその調査に重大な問題があったと主張している。

 訴えられた蘇鋼集団は11月10日、この件に関して自分たちの“言い分”を発表している。上海陸家嘴の開発部隊は当局の求める通りに地下水を遮断するための隔壁を作るなどの十分な措置を採っておらず、施工についても規定通りに行っていない。地下水や、土壌の攪乱が見られ、二次汚染が発生しているなどと主張している。

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