中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

「友人から依頼された仕事」を引き受けてはいけない 3回の失敗を経て学んだ教訓「盛り上がるのは最初の打ち合わせだけ…」

「友人が紹介してくれた仕事」なら受けてもいい

 結局失敗した3回はすべてこのパターンでした。1回分のギャラはもらったものの、2回目はナシ。そしてこの3人の友人とはどこか気まずくなり、一度は「反省会」と題した飲み会はしたものの、その後疎遠になりました。

 受注側の私としては「お前が言った通りにやったのになんでこんなに修正させるんだ!」と思いましたし、発注側の彼は「合わない仕事を出して申し訳ない」と思うかもしれない。しかし、本音は「お前だったら上司のお眼鏡に叶う仕事をすると思ったのにその期待を裏切りやがって。しかもお前にカネまで出すんだぞ!」でしょう。

「ビジネスライク」という言葉があるように、仕事には温情や縁ってものはあまり必要がないのかもしれません。結局、信頼できる友人であったとしても、その人とのやり取りだけではなく、その上にいる上司や、さらにその先にいる顧客も存在し、その人たちが決裁権を握っています。ビジネスとはそういうものです。

 たとえ友人から依頼された仕事であっても、その周辺にいる人たちと私とは何のつながりもない。だからこそ温情もないので、ビジネスライクに「切る」という判断もできる。そうなると友人は結局、板挟みになるだけです。よかれと思って友人に仕事を依頼しても結果は社内での立場が悪くなる。となれば、友人を切るしかなくなる。それは当然のこと。その人にしても、友人関係よりも自身の生活を成り立たせるその組織で波風立てないことの方が重要ですからね。だからこの3回の失敗の後、友人から時々誘われる仕事は全部断ってきました。

 ただし、「友人に依頼された仕事をする」はNGでも、「友人が紹介してくれた仕事」は、直接その友人とやり取りをしないことも多いため、受けてもいい。たとえその仕事がうまくいかなかったとしても、友人関係への影響はそこまで大きくない。さらに、「友人が紹介した人と仕事をしたら仕事がうまくいった挙げ句、新たな友人になった」は最高の展開といえましょう。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など多数。最新刊は『日本をダサくした「空気」』(徳間書店)。

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