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ビジネス
セブン&アイ伊藤家の苦渋

《創業者の存命中は難しかった》コンビニ専業に進むセブン&アイHD苦渋の決断 “赤字事業”を抱える中間持ち株会社の会長には創業者の次男

(左から)井阪隆一・セブン&アイHD社長、セブン-イレブン・ジャパン初代社長・伊藤雅俊氏、鈴木敏文・セブン&アイHD前会長(時事通信フォト)

(左から)井阪隆一・セブン&アイHD社長、セブン-イレブン・ジャパン初代社長・伊藤雅俊氏、鈴木敏文・セブン&アイHD前会長(時事通信フォト)

 10月10日、井阪隆一社長はオンラインで会見し、イトーヨーカ堂やロフト、デニーズなど非コンビニ部門を分離し、新たな中間持ち株会社「ヨーク・ホールディングス(HD)」の下に置くと発表。2025年度には、ヨークHDの大半の株式を売却するための外部企業の選定作業を進める計画だ。

 社名も「セブン-イレブン・コーポレーション(仮)」に変更すると発表した。『経済界』編集局長の関慎夫氏が言う。

「買収提案の前からセブン&アイHDは“物言う株主”にスーパー部門の抜本改革を求められていた。中間持ち株会社化はそれに応える組織改革ですが、傘下に入るのは赤字企業が多い」

創業者の存命中は難しかった

 しかも、イトーヨーカ堂は1920年開業の「羊華堂用品店」をルーツとする“祖業”だ。2014~2022年にセブン&アイHDで社外取締役を務めた月尾嘉男・東大名誉教授が言う。

「私は鈴木敏文前会長との縁で就任したのですが、当時はヨーカ堂が好調だった時代を経験している方もおられた。アメリカ流のドライな経営論では売却が筋だとしても、日本的なメンタリティから言うと祖業を手放すのはなかなか難しい。特に2023年に創業者の伊藤雅俊さんが亡くなる前は、話題になりにくい状況でした」

 そうした背景があるなか、10月11日に誕生した中間持ち株会社ヨークHDの人事に注目が集まっている。同社の代表取締役会長に、創業家の伊藤順朗氏が就任したのだ。

 創業者である伊藤雅俊氏の次男・順朗氏は1990年にセブン-イレブン・ジャパンに入社し、現在はセブン&アイHDの代表取締役副社長を務めている。66歳という年齢だが、「数年以内に現社長の井阪隆一氏から創業家への“大政奉還”で社長となる可能性がある」(全国紙記者)と見られてきた。

 その順朗氏が“赤字事業”を抱える新たな中間持ち株会社「ヨークHD」の会長に据えられたのは、コンビニ事業主体となるセブン&アイから離れ、将来的なイトーヨーカ堂売却に向けた役割を任うためだとの見方がある。

後編に続く

※週刊ポスト2024年11月1日号

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