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ビジネス
日産新社長を操る“影の支配者”の正体

日産の社長交代を主導したのは“メーンバンク・みずほ銀行出身の独立社外取締役”か 内田前社長を退任に追い込んだ“日産独自のガバナンス体制”

日産自動車の新社長に抜擢されたイヴァン・エスピノーサ氏(時事通信フォト)

日産自動車の新社長に抜擢されたイヴァン・エスピノーサ氏(時事通信フォト)

 この破談が結果として内田氏を退任に追い込むことになったが、この人事には日産の「社外取締役」を中心にした独自のガバナンス体制が大きく影響している。

 日産の取締役数は12人。そのうち8人が独立社外取締役、2人が筆頭株主であるルノーからの派遣、2人が内部という構造になっている。

 ホンダとの経営統合破談を決めた2月13日の日産取締役会で、破談に賛成したのは10人で、反対が2人。その2人は、独立社外取で監査委員会委員長の永井素夫氏(みずほ信託銀行元副社長)と、同・取締役会議長の木村康氏(ENEOSホールディングス名誉顧問)だとされる。

 日産に多額の資金を融資しているメーンバンクのみずほ銀行は、ホンダと日産の経営統合交渉を側面支援し、「みずほ銀行はホンダの子会社案を受け入れてでも日産は生き残りを図るべきと考えていた」(金融担当記者)とされる。

 永井氏は日本興業銀行(現みずほ銀行)出身でもあり、社内では古巣の意向を受けて破談に反対したのではないかと見る向きが強い。永井氏は、役員報酬を決める報酬委員会、トップ人事を決める指名委員会の両委員も兼務している。

「日産の社外取のなかで、最も権力を持っている人物」(日産幹部)

 破談は結果として永井氏の顔に泥を塗ることになった。この日産幹部が続ける。

「破談を契機に、永井氏が中心となって内田氏の交代を画策したと見られています。3月6日に開かれた指名委員会では、永井氏の主導によって5人の委員のうち全員が内田氏の退任に同意したようです」

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 関連記事《【インサイドリポート全文公開】日産エスピノーサ新社長を操る“影の支配者”の正体 経営陣の多くが退任するなか、中枢に留まった面々とは》では、新社長のもと経営再建に臨む日産新経営陣の内幕と今後の舵取りについて詳細にレポートしている。

【プロフィール】
井上久男(いのうえ・ひさお)/1964年生まれ。ジャーナリスト大手電機メーカー勤務を経て、朝日新聞社に入社。経済部記者として自動車や電機産業を担当。2004年に独立、フリージャーナリストに。主な著書に『日産VS.ゴーン 支配と暗闘の20年』などがある。

※週刊ポスト2025年4月18・25日号

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