「高関税」はトランプ流の交渉術
今は目まぐるしく変わるトランプ政権の方針に、日本を含め世界中のマーケットが振り回されている。先行きが不透明な状況が続くなか、日本の株式市場の今後の見通しについて、ヘム氏はこう語る。
「私は今回の各国への高関税適用は、トランプ流の交渉術だと思っています。交渉で各国から好条件を引き出すために、脅しではなく実際に高関税を発動した。その後すぐに方針を急転換しましたが、これは購買力がある米国だからこそできる交渉スタイルなのでしょう。マーケットの反応はやや過剰だと思いますが、相場は不確実性を嫌うので仕方がありません。
とはいえ、実は日本の株式市場の環境はそれほど悪くありません。2022年4月の東証市場再編をきっかけに、日本企業は資本効率を意識した経営が求められるようになった。具体的には、企業の自己資本に対する利益効率を示すROE(株主資本比率)や、株価が企業の純資産に対して割安かどうかを示すPBR(株価純資産倍率)といった指標の改善が求められている。PBRが1倍を割り込んだ企業を東証が問題視していることもあり、利益成長を伴わない自己資本の積み上げに市場は厳しい目を向けています」
日本の上場企業のROEは、米国や欧州の企業と比べれば著しく低い。東証のほか、アクティビスト、金融庁、個人投資家など、日本企業に改革を求めるプレイヤーも年々増えており、ROEの改善に対する圧力も一段と強まっている。
内需中心企業へのトランプ・ショックの影響は限定的
最近はトランプ政権の高関税政策の影響で、ヘム氏のポートフォリオ(金融資産の組み合わせ)の中心である「小型割安株」も一時的に株価が下がっている。そんななかでヘム氏が期待を寄せるのは、内需向けビジネスが中心の企業だ。
「トランプ政権による高関税は輸出関連企業にコスト増や競争力の低下をもたらしますが、内需中心の企業は海外依存度が低いため、関税の影響は限定的です。さらに、東証改革によるROEやPBRの改善圧力から、こうした企業は増配や自社株買いなどの株主還元を強化する可能性が高いと考えられる。つまり『内需中心の小型割安株』は株価上昇が期待できると思います。トランプ政権に振り回されて日経平均株価が暴落しても、悲観しすぎることはないと考えます」
そう語るヘム氏は現在、どういった銘柄に注目するのか。別記事『《億り人が選ぶトランプ関税の影響を受けにくい5銘柄》資産4億円超のヘムさんが厳選した東証スタンダード上場のお宝株、内需で稼ぐ小型割安株を狙い撃ち!』で具体的に解説する。
【PROFILE】
ヘム/京都大学卒業後、総合商社に入社。社会人1年目より投資を始め投資歴は27年になる。30歳で脱サラをして起業。現在も2社を経営する投資家兼会社経営者。392銘柄保有中、投資時価4.1億円(2025年3月31日時点)。個別銘柄分析&ポートフォリオ構成銘柄&成績をXで公開したところ、アカウント開設後、1年半でフォロワーが3万人突破。データを重視した投資手法で、その再現性の高さから、投資初心者から玄人まで幅広い支持を得ている。近著に『「増配」株投資 年1,075万円もらう資産3.7億円の投資家が教える!』(KADOKAWA)。