そもそも中国の米国ビジネスが激減することはない?
米国向け製品を他国に振り向ける動きもみられる。アリババグループでは、市場規模の比較的大きな欧州、カナダなどについて生活習慣や現地ニーズに関する調査グループを立ち上げたり、非英語圏であるASEAN(東南アジア諸国連合)、中東など潜在的に市場の大きな国に関して、現地言語によるAIサポートなどを強化したりしている。こうしたAIを用いたサポートは百度なども行っており、輸出企業が直接その導入を加速させる動きもみられる。
DeepSeekの登場以来、中国では、高性能生成AIの社会実装が急速に進んでいる。輸出業務において、言葉の壁や、法制度、消費習慣に関する知識の不足は深刻な問題につながり、マーケティングを困難なものにする。その点を高性能生成AIが補ってくれる期待が高まる。米国が自由貿易に背を向け、中国が対米報復に出たことで今後、中国を中心とした自由貿易体制が再構築される可能性が出てきた。その際、中国輸出企業で実装の進むAIが貿易事業の拡大を加速させ、中国系AIが非米国同盟国の間で広く普及するといったことが起こるかもしれない。
そもそも、米国ビジネスは激減することはないといった見方もある。4月16日における米国アップルストアの無料ショッピングサイトアプリのダウンロード数ランキングにおいて、中国系(敦煌網、淘宝、SHEIN)が上位を独占している。
前述のように、中国系EC業者の対応は速く、米国TikTok、Instagram、FacebookなどのSNSを通じて、品質の良さ、価格の安さを積極的にアピールしたり、ブランド物ではその多くが中国で生産されていることなどを周知させたりしており、そうした活動がこうした結果につながっているとみられる。中国系EC業者の積極的な宣伝広告活動は米国以外でも広く行われており、カナダ、イギリス、フランス、オーストラリアなどでも、ダウンロード数ランキングにおいて中国系が上位に立つ現象が起きている。