トランプ大統領が指摘する日本の“非関税障壁のイカサマ”とは(Getty Images)
アメリカのトランプ大統領が自身のSNSに「非関税障壁のイカサマ(NON-TARIFF CHEATING)」と題して8項目を列挙する投稿をしたのは4月20日のこと。注目は「関税および輸出補助金として作用する消費税」が含まれていたことだ。消費税を重大な非関税障壁と見て標的にしていることがわかる。
ならば、トランプ関税に対して日本の有効な対策は消費税率を引き下げることだろう。物価高騰に苦しむ国民も望んでいる。だが、石破茂・首相は「税率の引き下げは適当ではないと考えている」と後ろ向きで、自民党にも反対論が根強い。
「消費減税をしたくない理由の一つは『輸出戻し税』にあるのではないか」と指摘するのは消費税の研究者で税理士の湖東京至・元静岡大学教授だ。
「輸出大企業にとって、消費税制には税率が上がるほど『輸出還付金』が増えて儲かるという仕組みがある。つまり、税率を下げれば還付金が減るわけです。自民党はスポンサーである輸出大企業の顔色を窺って減税に踏み込めないのでしょう」
トランプ氏が問題視しているのが、まさにこの「輸出戻し税」だ。
消費税法では輸出品は免税と定められている。輸出する製品の消費税がゼロになるだけではなく、その製品をつくるために仕入れ段階で課税された消費税・地方消費税の全額が国と自治体から最後に輸出した企業に還付される(輸出還付金)。輸出比率が高い企業は、国内で販売した製品にかかる消費税より、輸出還付金が多くなる。消費税を納める以上に戻ってくるのだ。これが「輸出戻し税」といわれる仕組みだ。
「輸出戻し税の理屈は、国内で輸出品をつくる過程で課税された消費税は最後に輸出した企業に全額戻してあげるから、輸出先の国で消費税を払いなさいというものです。
しかし、米国には消費税がないため、輸出企業は還付金の分だけ製品を安く輸出できる。歴史的に見ても、最初に消費税(付加価値税)を導入したフランスが自国企業の輸出を有利にするために編み出した仕組みで、EU諸国や日本などが真似したという経緯がある。輸出補助金と見られても仕方がないわけです。トランプ氏が突然言い出したのではなく、米国は以前からこの非関税障壁を批判してきました」(湖東氏)
では、どのくらいの税金が輸出企業に戻されているのか。関連記事《【大企業の還付金と自民党への献金額を一挙公開】トランプ政権が問題視する日本の輸出企業への「消費税還付金」、2023年の推計は8.4兆円》では、輸出大企業の消費税還付金の推計額と自民党への献金額を一覧表で紹介、還付金に対するそれらの企業の説明と合わせて詳報している。
※週刊ポスト2025年5月9・16日号