【5】奇跡的な実力者
信用売りと信用買いを駆使して下落相場でも儲ける投資家です。まさに最高のパターンですね。
私にはとても想像できませんが、そのような方もいるのでしょう。相当の知力・経験・胆力を求められるのだと思います。浅い考察で恐縮ですが、よくわからないので語りようがないのです。本当にそんな人がいるのかもわかりません。
【6】凄腕投資家
凄腕投資家には普段からフルポジション(資産のほぼ全てを投資に回している状態のこと)の人が多いです。
彼らは、暴落時には下落の理由を冷静に分析し、ポートフォリオを組み替えます。暴落のそれぞれの局面で下げがきついと判断できる銘柄を売り、下落幅が抑えられそうな銘柄や反発が期待できる銘柄を買います。これを繰り返すパターンです。
もちろん大きな傷を負いますが、その傷口を最小限に抑えようと努力し、暴落を乗り切ります。私はこれが個人投資家の究極系だと思っています。
ただし、これは誰にでもできることではなく、ほとんどの個人投資家には無理だということを覚えておいてください。大半の投資家は暴落時にうろたえ、思考停止になり、最後は陥落売りします。
私の感覚ではITバブル崩壊やリーマンショック時には8割の個人投資家が退場しました。この8割には当時私が凄腕だと思っていた投資家も含まれています。
株式は長期では期待値1以上のゲームです。ここから数理的には「フルポジション」か「低レバレッジ投資」がベストな投資手法であるのは間違いありません。ただ、数理的と合理的は違います。人はそんなに強くないのです。
フルポジションで暴落を乗り切れる投資家などごく一握り。投資の世界ではプレイヤーが何度も入れ替わっていることを忘れないでください。
リーマンショックで退場した人、コロナショックで退場した人、植田ショックで退場した人はたくさんいます。その人たちは、SNS上にはもういないだけです。
株式市場は寛容なので生き残りさえすれば、多くの恩恵を受けられます。生き残ることが最重要です。
投資の世界でも生存者バイアスが存在します。
経験も胆力も銘柄選定力もあり生き残った凄腕投資家は、書籍を出版したり、SNSで発信したりしています。そうすると、それが正しく聞こえるのです。確かに彼らにとって「フルポジション」は最適解なのでしょう。ただしこれは彼らにとってです。
多くの方はそちら側の投資家ではなく、普通の投資家なのではないかと思います。
そして暴落時の対応は、普通の投資家にとって最も重要です。普通の投資家が暴落を乗り切るために必要なことは、1にも2にもキャッシュポジションの確保です。
※ヘム・著『「増配」株投資 年1,075万円もらう資産3.7億円の投資家が教える!』を元に一部抜粋して再構成。なおトランプ関税に振り回される今の株式市場でヘム氏が注目する具体的な個別銘柄については、関連記事の最新インタビュー『《億り人が選ぶトランプ関税の影響を受けにくい5銘柄》資産4億円超のヘムさんが厳選した東証スタンダード上場のお宝株、内需で稼ぐ小型割安株を狙い撃ち!』にて、紹介している。
【PROFILE】
ヘム/京都大学卒業後、総合商社に入社。社会人1年目より投資を始め投資歴は27年になる。30歳で脱サラをして起業。現在も2社を経営する投資家兼会社経営者。392銘柄保有中、投資時価4.1億円(2025年3月31日時点)。個別銘柄分析&ポートフォリオ構成銘柄&成績をXで公開したところ、アカウント開設後、1年半でフォロワーが3万人突破。データを重視した投資手法で、その再現性の高さから、投資初心者から玄人まで幅広い支持を得ている。最新刊は『「増配」株投資 年1,075万円もらう資産3.7億円の投資家が教える!』(KADOKAWA)。