弱気相場からの回復には平均3年9カ月要する
直近1年間(52週)の高値から下落率が10%を超えると「調整局面」、20%を超えると「弱気相場入り」と呼ばれます。
S&P500は、2025年2月の高値から4月7日の安値までに▲21.37%下落し、弱気相場入りが確認されました。同様にナスダックも、2024年12月の高値から一時▲26.83%まで下落し、こちらも弱気相場入りとなっています。
三井住友DSアセットマネジメントの調査によれば、1970年以降の7回の弱気相場では、起点となる高値から底打ちまでの期間は平均1年2カ月、下落率は平均39%でした。高値を再び回復するまでには平均3年9カ月を要しています。
もちろん、これらはあくまで過去の平均値に過ぎませんが、今回の下落はまだ2~4カ月程度で、下落率も20%前後にとどまっています。過去と比較すれば、まだ底打ちしていない可能性も十分に考慮すべきでしょう。また、一度崩れたトレンドが回復するまでには長い時間を要することも、データが示唆しています。
短期的に戻せるかは金融政策次第か
ただし、直近の株価は力強く反発しており、S&P500では4月25日の終値時点で安値からすでに下落幅の50%以上を回復しています。テクニカルの格言「半値戻しは全値戻し」に倣えば、時間はかかるものの、いずれ高値を取り戻す可能性も示唆されています。
S&P500日足。弱気相場入りからの「半値戻し」が見られる。TradingViewより筆者作成
過去に最も短期間で高値を回復したのは、2020年のコロナショック時です。この時は、中央銀行の迅速な金融政策の対応もあって、短期的に株価が持ち直しました。
現在、トランプ大統領はSNSを通じてFRB(連邦準備制度理事会)に強く利下げを要求していますが、パウエル議長は利下げに対して慎重姿勢を崩していません。今後の関税政策がもたらす景気とインフレの動向が、金融政策を左右し、株価にも大きな影響を与えることになるでしょう。
次回FOMC(連邦公開市場委員)は5月7日に予定されており、政策金利は据え置きが予想されています。ただし、注目すべきは次回会合以降の利下げに関する発言であり、これが現在の市場の大きな焦点となります。
株式市場が短期的に戻り基調にあるからといって、過度な期待は禁物です。引き続き、適切なリスク管理が求められる期間が続くでしょう。
【プロフィール】
森口亮(もりぐち・まこと)/個人投資家、投資系YouTuber。1983年、埼玉県生まれ。元美容師。「Excelで決算数値を管理して、有望な成長株を中・長期的に狙う」という手法で資産を10倍に。その後も着実に資産を増やしている。著書に『1日5分の分析から月13万円を稼ぐExcel株投資』(KADOKAWA)がある。YouTube「毎日チャート分析ちゃんねる」やnote(https://note.com/morip)を日々更新中。