基準が変更された理由は?
これまで、上場から10年経過した企業に対して時価総額40億円以上が求められていましたが、上場で資金を得ることが目的化してしまう「上場ゴール」に陥る企業も散見されました。結果、成長が停滞する企業が増え、投資家の信頼が低下していました。新基準は、上場から5年経過後に時価総額100億円以上を求めることで、企業に早期の成長を促し、市場の質を高めることを目的としています。現状、時価総額40億円以上、100億円未満の企業は約200社あり、これらの企業は基準を満たすための対応が求められます。
ただし、基準未達の場合でもすぐに上場廃止になるわけではありません。基準に満たないと判断された企業は、基準を満たすための具体的な施策とスケジュールを盛り込んだ「改善計画書」を提出。計画に沿って、一定期間(通常は1~2年程度)で基準を満たす必要があります。それでも基準を満たせない場合、最終的には上場廃止か、もしくは時価総額40億円以上あれば、スタンダード市場への市場変更を選択することになります。
企業が取りうる具体的な対応策は?
基準を満たすために考えられる対応策として、以下のものがあります。
【1】事業成長戦略の強化
多くの企業が、既存事業の拡大や新規事業への参入を通じて、売上や利益の増加を目指しています。 理論的には、利益が伸びれば株価は上昇します。時価総額は、「発行株数×株価」なので、結果的に、時価総額が拡大します。
【2】資本政策の見直し
株式の流動性向上や株主構成の最適化を図るため、自己株式の取得や株式分割、第三者割当増資などの資本政策を行います。
【3】M&Aや業務提携の推進
他社との合併・買収(M&A)や業務提携を通じて、事業規模の拡大や新たな収益源の確保を目指します。
いずれにしろ、これらの対策が順当に行われれば、株価にとってはプラス材料です。実際、トランプ関税の影響で混乱しているマーケットにおいても、グロース銘柄は比較的堅調で、年初来高値を更新している銘柄もいくつかあります。
狙い目としては、上場5年以上で、時価総額が100億円にあと一歩!の企業でしょう。財務に余裕があれば、自社株買いや配当開始、もしくは増配、株主優待などのアクションを前倒しで行うかもしれません。
それにしても、ここ数年で東京証券取引所の存在感が一気に高まりました。海外からの投資家からの信頼回復を得るため、東証自身がルールメイカーとして、リーダーシップを取る姿勢を強めているように感じます。この動きは、短期的には企業へのプレッシャーになりますが、長期的には「日本株の魅力向上」につながる可能性があり、それはわたしたち投資家にとってもポジティブな動きです。