被害急増の“証券口座乗っ取り”に億り人・かんち氏はどう備えているのか(イメージ)
不正アクセスによって証券口座が乗っ取られ、勝手に株式などが売買される被害が急増中だ。金融庁が5月8日に公表したところによれば、1月からの4月までで不正の件数は約3500件で、不正な売買額は3000億円超に達した。被害の増加が続くなか、株式投資で億の資産を築き、ネット証券の口座に多額の資産を置いている「億り人」はこの問題をどう受け止めているのか。
資産8億円超で高配当株投資の達人として知られる元消防士のかんち氏に話を聞いた。年間で約2400万円の配当金収入があることに加え、優待株でも金額換算で年約120万円分の優待品を手にしているという億り人だ。保有銘柄は600を超える。
「ニュースは衝撃的でした。著名な個人投資家のテスタさんが被害にあったとXに投稿していましたし、フォローしている人のなかにも“乗っ取られました”と明かしている人がいた。他人事ではありません。
自宅に空き巣が入る被害であれば、盗まれるのは置いている現金や貴金属などに限られます。ところが、証券口座に侵入されるというのは貸金庫ごと盗まれるようなもの。空き巣の被害の10倍以上の損失になることは間違いないでしょう。被害にあったら人生が終わるくらいのインパクトがあります」(かんち氏。以下「」内は同)
まずは二段階認証とデバイスの指定を
一連の不正では、犯罪グループが偽サイトに誘導するなど何らかの方法で口座番号やパスワードを盗み、証券口座にログインして本人になりすまして株を売却。そのうえで、あらかじめ仕込んでおいた中国株や板の薄い日本株を大量に買い、株価を吊り上げて自らの保有している株を高値で売り抜いているものとみられる。被害にあえば、上がり目のなさそうな株だけが手元に残ることになりかねない。ニュースを受け、かんち氏はどう行動したのか。
「全口座にログインして確かめたところ、今のところ被害はありませんでした。怪しいメールなどはまず開かないし、パスワードもものすごく複雑にしていますが、緊急対策として(スマホ宛に1回限りのワンタイムパスワードを送る)二段階認証とデバイスの指定(特定のスマホやパソコンからしかログインできない設定)を徹底しました」
他にも、外国銘柄の売り買い禁止といったかたちでロックをかけるケースもあるようだ。かんち氏の知り合いには「パスワードをわざと間違えてロックをかけた人もいる」という。当然ながら、自分もログインできなくなるわけだが、そうした判断に至るほどの緊急事態というわけだ。
「SBI証券では、口座のログインを二段階認証にしていても、バックアップサイトではIDとパスワードだけでログインできてしまう問題があった。同社は5月末にバックアップサイトを閉鎖するとしていたが、Xなどで“対応が遅い”と炎上し、5月2日に閉鎖を前倒しした。楽天証券も取引ツールの過去バージョンに脆弱性があったといい、古いバージョンからのログインの遮断する対応を取りました。こうした対応で、被害は減っていくのではないかとは思います」