外国人ドライバーが増加するなか、メディア報道などでは「外免切替は簡単に免許証が取れるので危ない」との論調が目立つが、外免切替と外国人ドライバーによる交通事故がダイレクトにつながるわけではない。自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏が指摘する。
「以前は来日した外国人が数日間で外免切替して日本の免許証を取得することもありましたが、最近は外免切替を望む外国人が増えて予約しても数か月待ちというケースが多く、手軽に取得できるものではなくなりました。
外国人による交通事故も外免切替で日本の運転免許証を取得した人ではなく、国際運転免許証を持っている人や無免許の人による事故が多い印象です。外免切替の技能確認の合格率が30%と低いことからも、一定の安全性は担保されていると考えられます」
政府は交通事故を起こした外国人ドライバーのうち、どの程度が外免切替者だったかなどのデータを把握していない。国民の不安を解消するためにも、外免切替の安全性に関する情報公開が待たれる。
技術はあっても知識が不十分なドライバーは「危険」
今度、外免切替のニーズがさらに増えると予想されるなかで課題もある。金坂氏は、10問中7問正解で合格になる「知識確認」を問題視する。
「運転技術は備わっていても、交通知識が十分でないまま日本の公道で車を走らせるのは危険です。道路交通に関する知識が足りないドライバーが運転中にとっさの判断を迫られた時、間違った運転行動をして事故につながる恐れもあります。現状の外免切替の知識確認では、この点が不足しています。この先は十分な運転知識を備えたプロドライバーの育成が必要。私どもは、外国人が母国語で道路標識を学べるアプリなどを準備しています」(金坂氏)
運転免許試験場の受け入れ態勢も課題だ。現在、急増する外免切替のニーズに対応できておらず、知識確認を受けるまで数か月待ちという試験場が少なくない。
「受け入れ態勢の拡充とともに、例えば外免切替を希望する外国人が指定自動車教習所で運転知識や技能を学べるような仕組みも求められます。この先は日本人だけでは労働力が足らず、外国人労働者の受け入れが3万人、5万人、10万人と増えていくと想定されるなか、外免切替を様々な面からサポートする取り組みが必要でしょう」(同前)
少子高齢化による労働力不足と外国人労働者の受け入れ、それに伴う外国人との共生……「外免切替」をめぐる問題には、現在と将来の日本が抱える様々な課題が凝縮されていると言えそうだ。
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取材・文/池田道大(フリーライター)