強く押さなきゃいけない
一般的なスマホから機能が“引き算”されただけという印象を持ちがちだが、“別物”のように異なる点は少なくないという。『世界一簡単! 70歳からのスマホの使いこなし術』の著者でスマホ活用アドバイザーの増田由紀氏が言う。
「多くのシニア向けスマホでは、よく使われる機能だけがホーム画面に表示されているので、新たにアプリを追加してもホーム画面の特定の場所に入ってしまう。私の講習会でも基本アプリだけでなくフェイスブック、インスタグラムなど『SNSを楽しみたい』という年輩者が増えていますが、いざ始めようという時に、『ダウンロードしたアプリが探せない』と困る人が多い」
一般的なスマホであれば、ホーム画面をスワイプ(指を触れたまま、特定の方向に滑らせる操作)することでダウンロードしたアプリを探せる。それがシニア向けスマホでは「メニュー画面」を表示し、さらにそこから「追加したアプリ」の欄を表示しなければ確認できないことが多い。
最初の画面がシンプルに整理されていることは、“使いやすさ”につながる一方、追加した目当ての機能に辿り着くまでの手数がかかってしまうことがあるわけだ。シニア向けの利便性のための機能も、人によって“合う・合わない”があることは見逃せない。
「画面を軽くタップ(一瞬触れて離す)しただけでは反応せず、グイっと強く押し込まないとダメな機種もあります。これは、加齢により皮膚が乾燥しやすくなった人の指ではタップ操作やスワイプ操作で反応しにくいことがあることから考えられた仕様で、『指圧』で操作できるようにした“親切設計”。ただし、講習会では一部のユーザーから、『いちいち強く押すのが疲れる』『イライラする』といった声を聞きます」(同前)
また、文字が大きく表示される特徴についても、「大きいのはありがたいが行間が広すぎて文章は読みにくい」(60代男性)という声も聞こえてきた。
増田氏はシニア向けスマホの利点は認めつつ、違和感を覚えた人は「機種変更を検討してもいい」と語る。
「広く普及したことで、年齢にかかわらずスマホに慣れてきた方が多い印象です。そうなると、どのスマホが使いやすいかは本人次第。最初に手にするスマホは重要で、シニア向けでも一般のスマホでも慣れれば『それが当たり前』となります。操作方法を相談できる相手を身近で確保するためにも、まずは家族の誰かと同じ機種を選ぶことをおすすめしています」
生活に欠かせないアイテムである以上、「シニア向け」ではなく「自分向け」を見極めたい。
※週刊ポスト2025年5月23日号