シニア向けスマホに思わぬ落とし穴も(イメージ)
一般的なスマホと比べて、操作が単純でわかりやすいとされる「シニア向けスマホ」。“スマホデビュー”に最適かと思いきや、意外な落とし穴もあるという。スマホの専門家2人が事例をもとに解説する。
NTTドコモ・モバイル社会研究所の「一般向けモバイル動向調査」(2024年)によると、携帯電話所有者のうちスマホ利用者は全体の約97%。70代男性の92.9%がスマホを所有と回答した。
特にこの数年は、3G回線を用いた「ガラケー」サービスがau、ソフトバンクと相次いで終了したことで、スマホへの乗り換えを選ぶユーザーが急増している。
その際の選択肢の一つとなっているのが「シニア向けスマホ」だ。情報ネットワーク・情報セキュリティが専門で、スマホの活用術に詳しい岡嶋裕史・中央大学国際情報学部教授が言う。
「シニア向けスマホは2012年にNTTドコモから発売されて以降、各社が参入して累計数千万台が売れています。デザインや機能がシンプルなのが特徴。シニア層に多い『老眼で見えにくいから文字を大きく』『新しい機能はいらない。電話ができればいい』といった要望に応えており、ガラケーからの買い替え時の受け皿になっています」
一方で、岡嶋氏は購入者からの不満を耳にする機会も多いという。
「購入後に、『普通のスマホにすればよかった』とこぼす人が意外と多い。操作に困った時、子供や孫に解決法を質問しても、シニア向けスマホ独特の仕様に慣れておらず『わからない』と困惑されることが多いそうです」
岡嶋氏が言うように、シニア向けスマホの見逃されがちな落とし穴として存在するのが、「使い方を周囲に相談できない」こと。離れて暮らす80代の母親の相談に手を焼いたという50代男性が語る。
「母は数年前にガラケーからシニア向けスマホに乗り換え、LINEのメッセージのやりとりで友人たちと交流を楽しんでいた。ある時、『LINEの調子が悪い』と落ち込んだ様子で電話をしてきた。どういう状態かを聞くと、『LINE電話をかけても相手の声が聞こえない』と言う。私はiPhoneを使っているため、アプリのリロード(再読み込み)などを指示しようとしても、画面での表示などが違うから話が噛み合わない。
シニア向けスマホの再インストールなどの手順を調べたのですが、電話ではうまく伝わらず、結局、『駅前の携帯ショップで聞いて』と言うしかありませんでした」