その一方で、縁故採用には「有力者や政治家などによる雇用のねじ込み」や「不公正な慣習」といったネガティブなイメージが付きまとうデメリットがあります。なかには、わざわざ「役員や従業員の○親等以内は求人応募の資格対象外」といった自社の採用制度を公表して公平性をアピールしている会社もあるほどです。
また、通常の採用手続きを経て入社した既存従業員が不公平感を覚えるという点もデメリットになります。この事例のように、入社後に縁故採用者の能力不足が発覚して同僚にしわ寄せがくる場合や、縁故採用者に何らかの特別待遇があった場合には、従業員の不満や反発はより大きくなるでしょう。
ですが、同一業務を行っている従業員のなかで、1人だけ給与が高い、休暇が多く付与されている、昇進が異常に早い、といった特別待遇を受けていたとしても、具体的に何かの法律に違反していると考えるのは難しいです。成果を上げている人とそうではない人が同じ待遇を受けている場合も、違法性は認められないと考えられます。
とはいえ、普通の会社であれば、前記のようにモチベーション低下につながる不公平感が生まれないように、少しでも縁故採用者への特別待遇と思われるような措置は取らないものです。にもかかわらず、特別待遇を隠そうともしない場合は、会社に対して相当な影響力と発言力を持つ人物がいるということです。加えて、その人物は会社全体やそこで働く従業員たちよりも私的な都合や身内の利益を優先しているわけですから、ほかの業務や労務に関しても同様なことをしがちであり、要注意な会社と言えます。
この事例のように縁故採用者が能力不足で周囲が困っている場合は、まずはありのままを会社に相談するしかありません。そのうえで「○○さんの娘だから……」と特別待遇を続けるような返答があれば、ヤバい会社と判断されても仕方ないでしょう。
※退職代行モームリ/大山真司・著『今の会社、ヤバいかも!? 3万人の「もう無理!」でわかる会社の見分け方』を元に一部抜粋して再構成