東京証券取引所はより透明で健全な市場づくりを進めようとしている
2025年3月、東京証券取引所(東証)が定めた「上場維持基準に関する経過措置」が終了した。これ以降の基準日(事業年度の末日等)において基準未達の企業は、原則1年間の改善期間に入り、期間内に基準を達成できなければ監理銘柄・整理銘柄(原則6か月)に指定後、上場廃止となる。3月期決算の企業の場合、2026年10月に上場廃止ということになる。株式市場や投資家にはどのような影響があるのか。『世界一楽しい!会社四季報の読み方』などの著書がある個人投資家で株式投資講師・藤川里絵さんが解説するシリーズ「さあ、投資を始めよう!」。第142回は、「東証の上場維持基準」について。
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2025年3月、東京証券取引所(東証)が定めた「上場維持基準に関する経過措置」が終了しました。
日本取引所グループホームページより
このルール変更は、一部の上場企業にとって大きな転機となりますが、私たち個人投資家にとっても無関係ではありません。なぜなら、この措置の終了によって、保有銘柄の将来性や流動性に影響が出る可能性があるからです。
経過措置が終了で何が起きるか
まず、「経過措置」とは何かを簡単に説明します。2022年4月、東証はこれまでの市場区分を「プライム」「スタンダード」「グロース」の3つに再編しました。これに伴い、各市場で企業が守るべき基準も厳しくなりました。しかし、当時すでに上場していた企業に対しては、すぐに新基準を適用せず、2025年3月までの猶予期間が設けられたのです。
この猶予期間中、基準を満たさない企業は「改善計画書」を提出し、上場維持に向けた取り組みを行ってきました。しかし、経過措置が終わった今、今後は厳格に新基準が適用され、基準を満たせなければ上場廃止となる可能性があります。
たとえば、プライム市場の上場維持には、流通株式の時価総額が100億円以上、流通株比率が35%以上といった条件があります。これらの条件をクリアできない企業は、別の市場区分への移行や、最悪の場合、上場廃止という選択を迫られることになるのです。
では、私たち投資家はどう対応すればいいのでしょうか?