株価の動きだけでなく、配当も含めて考える
リーマンショックや東日本大震災など、相場に大きなマイナス影響を及ぼすような出来事がいつ訪れるかは予測できない。そこで長期株式投資氏は、2009年にポートフォリオを「大型配当株」メインに切り替え、“どんな相場になっても安定的に配当を受け取る”ことを目指して模索する日々が続いた。
「私が具体的な投資の方針を立てられるようになったのは、2010年頃に著名な経済学者であるジェレミー・シーゲル氏の『株式投資の未来』という本を読んでからです。簡単に言うと、医薬品や生活必需品など歴史的にリターンが高いセクター(業種)にはベットする価値があるという学びを得ました。それまではなんとなく銘柄を個別に選んで買っていたのですが、投資方針が定まったことで、安定的に配当を受け取ってキャッシュフローが積みあがっていき、資産も着実に増えていきました。
株価の動きだけを見て一喜一憂している人もいますが、その銘柄を保有している間に受け取った配当も含めて、リターンを考えなければいけない。そういう視点で見ると、株価が多少下がっても、“トータルでは損はしていない”という意識になり、投資を続けやすいのではないかと思います」
昨年の配当収入は税引き後で471万円
長期株式投資氏の運用資産が初めて1億円を突破したのは2022年11月。翌年の3月末、長年勤めていた会社を早期退職した。会社員としての安定した地位と収入を手放す決断ができたのは、億り人の仲間入りをしたことに加え、「配当」という定期収入あったことが大きい。
「今後も月に30万円くらいの配当が入ってくるだろうという見込みがつき、年金を受給するまでにキャッシュフローがどのように推移していくか、平均寿命まで生活水準を維持できるかといったことも細かく計算したうえで、“まぁ、会社を辞めても大丈夫だろう”と判断しました。
『FIRE』(経済的自立を達成することにより早期退職すること)という言葉が日本でも広く知られるようになりましたが、資産運用で生活の基盤を作り、自分のやりたいことで世の中に貢献していくという生き方があってもいいのではないかと思っています」
人を育てる仕事(投資教育)をやってみたかったという長期株式投資氏は退職後、オンラインの投資教室、SNSやブログでの情報発信、書籍の執筆などに従事している。その傍ら、投資実績も年々伸びており、直近の2024年の配当額は税引き後で471万円(米国株、J-REITを含む)、運用資産は1.8億円に達したという。
その長期株式投資氏は現在、具体的にどのような銘柄に注目しているのか。関連記事『《億り人が厳選!長期投資向き7銘柄》「配当をもらいながら2030年代の巨大プロジェクトを待つオイシイ銘柄」から「名証上場の割安銘柄」まで資産1.8億円の長期株式投資氏が解説』で解説していく。
【PROFILE】
長期株式投資(ちょうきかぶしきとうし)/1977年生まれ。「日本の配当株」専門の投資家。2004年から株式投資を始め、新興市場にて個別銘柄の投資をするもライブドアショックで痛すぎる損失を経験。以降、大型株へ投資対象をシフトするが、リーマンショックで含み損が600万円にまで膨らむ。2009年、ポートフォリオを大型配当株メインにスイッチ。以降は安定的に資産を増やし、2023年に長年勤めた会社を45歳で早期退職。現在は投資教育をライフワークとする。『フルオートモードで月に31.5万円が入ってくる「強配当」株投資』(KADOKAWA)などの著書がある。