死亡保障2336万円→365万円に。民間の生命保険ならあり得ない変更
この改悪がどれほどの年金損失になるかを試算した。
月収45万円の夫を55歳で亡くした同い年の妻の改正前と改正後の遺族厚生年金の総額を比較してみる。夫の厚生年金(報酬比例部分)は年約98万円、遺族年金は4分の3の年間約73万円とした。
女性の平均寿命の87歳までの受給総額は、現行制度では2336万円になる計算だ。それに対して改正後は支給が5年で打ち切られ、総額365万円しかもらえないことになる。1971万円もの支給カットだ。
国民にすれば、死亡保障2336万円に対する“生命保険料”を毎月払ってきたのに、保険会社である国から、いきなり死亡保障を365万円に引き下げると言われるようなものだ。北村氏が指摘する。
「サラリーマンは“自分に万が一のことがあっても、妻には遺族年金が出る”という前提で高い年金保険料を払っているわけです。それを一方的に『保険金を減らす』『支給期間を有期にする』というわけですから、遺族への保障の切り捨てです。民間の保険会社であればこんな変更はあり得ない。年金制度への信頼の根本を揺るがす改悪で、国はこんなことをやっていいはずがない」
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※週刊ポスト2025年6月6・13日号