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通帳には1000万円あるが… 定年後節約に努めてきた70代男性の後悔

2019年6月17日 16:00

預貯金が多く残れば幸せとは限らない

預貯金が多く残れば幸せとは限らない

 金融庁が6月3日に公表した報告書「高齢社会における資産形成・管理」で、年金収入に頼った世帯では「毎月約5万円の赤字」が出ると試算されている。赤字は長生きするほど積み重なり、20年で1300万円、30年だと2000万円に膨れ上がる計算だ。

 報告書の数字を額面通りに受け取ると、「ムダ使いは一切せず、退職金を少しずつ取り崩して、毎月の赤字を補填していこう」と考えたくなるが、それを実践した結果、晩年に後悔に苛まれる可能性がある。

 77歳になった長谷川さん(仮名)が重い口を開いた。

「退職してから、節約に努めてきました。現役時代には時々出かけた温泉旅行も控えてきたし、夕食はスーパーのタイムセール品を買うようにした。おかげで退職金の取り崩しは毎月2万~3万円で済んだし、まだ通帳には1000万円も残っていますよ」

 資金に余裕はある。ただ、長谷川さんの表情は曇ったままだ。後悔を口にしたのは、昨年病気で亡くなった妻に話が及んだ時だ。

「一人になって過去の手紙なんかを整理していたら、同窓生たちからの便りには退職して間もなく夫婦で行った旅行先からの絵葉書が多いことに気づいたんです。私も、元気なうちに海外旅行にでも連れていってあげればよかった。お金があっても彼女がいない今となってはもう手遅れですが……」

 実は高齢者世帯といっても、ライフスタイルには年齢ごとに変化が生じている。総務省の「家計調査(2018年)」によれば、60~65歳の高齢世帯の消費支出は月に30万4600円なのに対し、75~74歳では25万8400円と15%も縮小する。ファイナンシャルプランナーの大沼恵美子氏はいう。

「定年直後は誰しも同窓会や夫婦旅行の楽しみが多い半面、出費もかさんでしまいます。一方、70代半ばごろからお誘い自体が少なくなる。歳をとると支出は減るという点は、定年後の資金計画を立てる際に見逃しがちなポイントです」

 預貯金が多く残れば幸せとは限らないのだ。

※週刊ポスト2019年6月21日号

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