監視・偵察を担うファーサイト社のドローン
日本で唯一の国際防衛・安全保障展示会「DSEI Japan2025」が5月21日に幕張メッセで始まった。
三菱重工業、IHI、ボーイングなど伝統的防衛企業が軒を連ねる会場で異彩を放っていたのが「ウクライナ・ブース」。防衛テックの6社のトップが楽天グループの招きで来日し、DSEIに出展した。いずれもロシアが侵攻した2022年2月以降に設立されたスタートアップ企業である。
「有事の備え」ではなく、今まさに大国ロシアと「実戦」を繰り広げているウクライナ・ブースで見えたのは、AI(人工知能)やドローン(小型無人機)が主役となる「新しい戦争」の姿だった。
6社を取りまとめるのが2023年に設立されたウクライナ政府機関「Brave1」。スタートアップ企業を支援して軍に先端技術を装備し、戦場での優位性を確保するために生まれた組織だ。CEOのナタリア・クシュネルスカ氏は語る。
「ウクライナは艦隊を持ちません。しかし、洋上ドローンを駆使することで、ロシア艦隊と戦っています。(ロシアの電波妨害を避けるために)暗号化したUGV(無人地上車両)が前線で地雷を除去していますが、これも2年で開発。輸入していたドローンも今では800種類を国産しています。こうした先端技術は重厚長大の防衛企業ではなく、スタートアップ企業が開発しています。ロシアはサイバー、AIリソースも豊富ですが、我々は若い企業のスピードでこれに対抗している」
現代の戦争は肉弾戦ではなくAIが操る「無人機VS無人機」の戦いだ。
「戦場や戦火に晒される市街地では、限られた時間で意思決定をしなければならない。それが遅れたり、誤ったりすれば、多くの命が失われることになります」
そう語るのはAIを使った防衛技術プラットフォームを開発した「グリセルダ」の営業責任者、アナスターシャ・フラパイ氏だ。
同社のAIは部隊からの報告や、住民のスマホから寄せられた断片的な画像データを瞬時に統合して作戦遂行のための情報を提供する。「溢れるデータをAIで単純明快にすることが指揮官の意思決定を助けている」とフラパイ氏は言う。
「(戦争は)AIの活用で新しい段階に入った」
そう語るのは、ウクライナ軍に地理空間情報を提供しているファーサイト・ビジョンの創業者で共同CEOのヴィクトーリャ・ヤレムチュク氏だ。同社のAIはドローンが撮影した映像から自動で目標物を検知し、変化を検出すれば瞬時にアラームを鳴らす。
「敵の動きをどれだけ早く、広範に把握できるか。時間と空間の戦いを制するのはAIによる大規模分析だ」とヤレムチュク氏は言う。