主婦や高齢者の死亡慰謝料は低くなりやすい現実
命に“値段”をつけなくてはいけないのは、人が亡くなったときだ。井出さんのような交通事故に加えて、医療ミスや労災などで人が亡くなると、「賠償金」が算定される。
その際、大きな柱になるのが「死亡慰謝料」と前出の「逸失利益」だ。弁護士法人・響の弁護士・古藤由佳さんが指摘する。
「死亡慰謝料は、被害者の属性に応じて一定の基準が設けられます。被害者が一家の支柱なら2800万円、母親や配偶者なら2500万円、そのほかの場合は2000万円から2500万円が基準になります」
かけがえのない命に対する慰謝料に差が出ることに、反発する人もいるかもしれない。だが、この差額には「遺族の生活保護」という側面もある。
「死亡慰謝料は亡くなった本人への慰謝だけでなく、遺族の精神的苦痛を回復し、その生活を保護することもめざします。被害者の属性で遺族の心の痛みは変わらないでしょうが、家計への貢献度が高い一家の支柱の死亡慰謝料を高くすれば、遺族の経済的ダメージを抑制できます。
一方で、専業主婦も家庭生活で大きな役割を果たすものの、家計を経済的に支えるという意味では“一家の支柱には及ばない”と判断され、主婦は死亡慰謝料が低くなる傾向があります」(古藤さん・以下同)
高齢者も死亡慰謝料が低くなりやすい現実がある。
「一般に高齢者は若い世代より人生をすでに謳歌しているものとみなされます。収入面も年金のみのケースなどが多く、遺族の生活保護を図る必要性が少ないことから、死亡慰謝料が低くなる傾向があります」